こちらはある殺人事件と
関係者の手記や情報が
記録されたフロッピイを
めぐるミステリーよ。
フロッピイ!!
ワープロ時代だな!
フロッピイにはどんなことが
記録されていたんだ?
主婦の日記があり、その主婦は
誰かが自分になりすましている
という奇妙な体験をしているの。
その後、彼女は自宅の部屋で
死体となって発見されるわ。
なりすましだって??
何だか気味が悪いな。
主婦の周りにはどんな奴らが
いたんだろう。
『プラスティック』井上 夢人 (著) 講談社文庫
あらすじ
このフロッピイには54個のファイルが収められている。
複数名の名で記されており、冒頭には出張中の夫の帰りを待つ主婦・向井洵子が体験した奇妙な出来事が書かれていた。
自分自身であることを揺るがす事件に巻き込まれていく、謎が謎を呼ぶミステリー。
自分を装う もう一人の自分がいる
フロッピイの中には、主婦・向井洵子の日記がありました。
夫の出張中にワープロをマスターしたいと考え日記をつけ始めたこと、そして図書館で体験した奇妙な出来事のこと。貸し出しカードを作ろうとカウンターに向かった洵子は「すでにあなたの名前は登録されているのでカードは作れない」とスタッフに言われてしまいます。
不安に駆られた洵子は夫の職場に電話を入れますが、「あなたは向井さんの奥さんではない。声が違う」と言われてしまいます。
これは一体どういうことなのか。
夫が帰ってくればこのことを笑って聞いてくれるだろう。
こうして向井洵子の日記の記述は五月二日で終わります。
その六日後、五月八日に彼女の住むマンションの部屋の押し入れから布団にくるまれ、顔面を切り刻まれた全裸死体となって洵子は発見されます。
行方不明である夫を重要参考人として、警察は指名手配。
一方、自宅のドアポストに投げ込まれたこのフロッピイを見つけた奥村恭輔は、この日記の内容に興味を持ちます。
書きかけの小説の参考になるかもしれないと考え、この日記に書かれている、本人ではない可能性を持つ「向井洵子」について調査を開始。
そこで明らかになる事実を知り、恭輔は向井洵子はどこかに生きているのでは?と考えるのですが…。
まとめ
一人の主婦が殺害され、その被害者は自分だった…。
そんな衝撃的な事件の真相を、作家の卵や被害者自身が探っていきます。
記憶や自分が自分であることへの不安や揺らぎが細やかに描かれピリピリするような緊張感が伝わってきます。
何よりも数人の登場人物により視点の異なった描写と時系列の配置がしっかりと練られた構成が見事です。
中でも特筆すべきはその事実が明らかになる場面。
思わず「うわぁ…」と声が出てしまう劇的なシーンです。
そして54個目のファイルを目にしたとき、この登場人物を、そして自分自身の理解者になることができるのか。
そんな風に考える、深い余韻を残すミステリーです。
<こんな人におすすめ>
一枚のフロッピーに収められた日記と殺人事件との不可解な関わりを描いたミステリーに興味がある
自分が果たして本当に自分なのか不安を覚えてしまうようなミステリーを読んでみたい
井上 夢人のファン
ひょえー この真相が
明らかになる瞬間の演出が
すごすぎるだろ!!
映像化は絶対無理なやつだ。
小説ならではのおもしろさだよな。
自分は本当に自分の頭で
ものを考えて今ここに存在
しているのか?そんなことを
思わず考えてしまうような物語ね。
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