こちらはバリエーション豊かな
九篇の作品を収めた短編集よ。
自分の芯となるものとの出会いや
不思議な王国の話など内容も様々ね。
自分の芯となるものとの出会い。
大切だよなあ。どんなシチュエーション
だったんだ?
やりたいこともなく病院の喫茶店で
アルバイトをしていた女の子が
あるお客が忘れていった文庫本を
手にしたことで変わっていくの。
へえ〜。そりゃほんとに
ちょっとしたことだな。
それでその女の子はどう変わって
いくんだろう。
『サキの忘れ物』津村 記久子 (著)新潮文庫
あらすじ
十八歳の千春は高校をやめた後、病院に併設された喫茶店でアルバイトをしている。
夢中になれるものがない、と思っていた千春は、ある日客が忘れていった文庫本をふと手に持ってみる。
これまでの人生で最後まで読めた本はなかった千春だが。
表題「サキの忘れ物」ほか不思議な王国や企みに満ちたゲームブックなどバリエーション豊かな魅力の詰まった九篇を収めた短編集。
お客さんが忘れていった一冊の本
母よりは年寄りで祖母よりは若い。
そんな女性が、千春がバイトしている喫茶店に毎日のようにやってきて、メニューの中のいろいろなものを注文します。
今日は閉店近くまでいたそのお客さんが文庫本を忘れていきました。
それはサキという名前の、外国人の男の人が書いた短編集のようでした。
これまで本を最後まで読めたことのなかった千春でしたが、なぜか本を手に取り、家に持ち帰ります。
本を開くとサキはビルマで生まれた、とあり千春はその国がどこにあるのかわからず、母親や店長にたずねてみたりします。
本は翌日もやってきたお客さんに返し、これまでお客さんと話すことは一切なかった千春は意を決して彼女に話しかけます。
すると女性は、友人の見舞いに来ていることなどをさらっと答えてくれました。
千春は仕事帰りに本屋へ寄り、「サキ」の本を購入します。
ある日熱を出した千春はバイト先から病院へ行きます。
するとそこに、あの女性客がいました。
何気ないやりとりをいくつか交わし、伝えたいと思っていた先の本の感想も伝えることができた千春ですが、それが女性の姿を見かけた最後の機会となったのです。
まとめ
特にやりたいこともなく、喫茶店のバイトをしていた千春。
他人や物事に薄い膜が張られているようなちょっとした距離感を覚えているようです。
それが一冊の文庫本の、それも著者名が昔自分に子供が産まれたらつけようと思っていた名前だったというささいなきっかけで本を手に取り、知らなかった世界に触れ、他人と関わろうという気持ちへと成長していきます。
一冊の文庫本が置いていったのは女の子の夢と未来。
そんな風に思える物語です。
<こんな人におすすめ>
何にも夢中になれるものがなく高校をやめた女の子があることをきっかけに人生が動き出す話に興味がある
ふとした出会いから自分の行動や考え方が変わっていく物語を読んでみたい
津村 記久子のファン
一冊の本から人生が動き出すって
本当にいいよな。改めて本の力を
感じさせられるぜ。
ふとした出会いから人生が
変わることってあるわよね。
人や本との出会いはこの先の
人生につながっているのよね。
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