
こちらは江戸で起こる事件に
挑む同心を描いた『恋牡丹』に
継ぐ第二弾よ。同心を継いだ
息子の清之助がある事件の
犯人として疑われてしまうの。

ん?確か前回は父親の惣左衛門が
同じような目に遭ってなかった?

そうなの。困った清之助は
今は惣左衛門の妻となった
かつての牡丹ことお糸に話を
聞きにいくのよ。

なるほどねえ。あの二人が…。
そのあたりの時の流れも
楽しめそうだなあ。
『雪旅籠』戸田 義長 (著)創元推理文庫
あらすじ
若い頃から悪人の捕縛や吟味に辣腕を振るい続け、その優れた能力から『八丁堀の鷹』と謳われてきた北町奉行所定町廻り同心の戸田惣左衛門と気弱な息子の清之介。
同心親子が幕末の時代の波に翻弄されながらも、江戸で起こる事件の謎に挑む八編の物語。
雪降る旅籠で起きた殺人事件の謎
引退し、同心を息子・静之介に引き継いだ惣左衛門は、かつて殺人の疑いをかけられた自分を見事な推理で救ってくれた元花魁のお糸と所帯を構え、花の手入れや囲碁を打ちながら穏やかな隠居生活を送っていました。
惣左衛門が用事で出かけたある日、清之介がお糸をたずねてやってきます。
清之介は十日前、ある事件に巻き込まれ苦しい状況になっていたのでした。
その日、捕り物に加勢した清之介は以前襲われていたところを救ってやった兼八と遭遇。
その兼八の後をつける人物を見つけたため、清之介も後を追い一軒の旅籠へ入ります。
兼八の後をつけていた男と女も同じ宿に泊まるようです。
清之介が来たことを見て喜んだ兼八は夕食の時にしきりと酒をすすめ、清之介もついつい飲んでしまいます。
夜中に一度物音を聞いたような気がしたものの眠り込む清之介。
明くる朝、兼八は胸から血を流した死体となって発見されます。
外には足跡がなく、内部の人間の仕業に間違いないのですが決定的な証拠や動機が見当たらず、清之介も容疑者の一人に。
話を聞いたお糸はうっすらと笑みを浮かべ…(『雪旅籠』)。
まとめ
前作『恋牡丹』に次ぐ第二弾。
江戸の末期、時代の転換期に起こる事件は大老・井伊直弼が暗殺された謎や、雪に閉ざされた旅籠で起こる殺人。
悪を取り締まる同心のピリッとした居住まいの正しさ、時おり自分自身に向ける不安な思い、そしてすご腕の父親と今ひとつの息子の姿が対照的に描かれ人間味あふれる彼らの姿に、時代は違えども共感する部分があります。
景色の陰影や人情が鮮やかに浮かび上がるミステリー短編集です。
<こんな人におすすめ>
江戸末期、動乱時代の同心親子が江戸の事件の謎を解く物語に興味がある
前作『恋牡丹』を読んだ
戸田 義長のファン


清之助の成長と惣左衛門の
隠居後の姿。成長あり変化ありの
中であの人の冴えた推理は
変わらず、ってとこだな。

時代の変化に戸惑いながらも
矜持を持って江戸の治安を
守り続けた彼らの姿とその
生き様に胸がじんわりと
熱くなる物語ね。
前作『恋牡丹』のイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます。
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