
こちらは徹底的にシステム化された
近未来の日本で政府から立ち退きを
強制された一家が国に対して
宣戦布告をする物語よ。

国を相手に?なんだって
そんなことになるんだ。

超エリートのA級市民である
斎藤総一郎がAIに仕事を奪われ
無職になったの。国から転居を
強制され最終的に自分の役割を
悟った総一郎は核兵器を作り
国に宣戦布告するわ。

わあ〜 優秀な人間がAIに
仕事を追われ…って
なんだか身につまされるなあ。
これから実際に起こりそう。
『斎藤家の核弾頭』篠田 節子 (著) 朝日文庫
あらすじ
2075年の日。
「国家カースト制」により能力別に管理され、結婚相手もシステムが選んだ相手と行い、子供を持つ人数にも制限がある。
超エリートである「特A級市民」斎藤総一郎一家は、政府から立ち退きを強制される。
理不尽な政府からの仕打ちを受け、総一郎は国に対して宣戦布告を行う。
特A級市民を襲う試練の連続
最高裁判所の裁判官だった総一郎は、コンピューターに職を追われ三十七歳にして年金生活者となっています。
文京区にある先祖から代々住む木造家屋に総一郎と妻の美和子、総一郎の父と母、祖母、五人の子供たちがひしめくようにして暮らしています。
政府から何度も立ち退きをするようにと役人がやってきますが断り続けていた総一郎。
しかし、ある日古びた家の二階の床が壊れ、怪我人が出たりと大きな騒ぎに。
政府からベイシティの家を提案されます。
これまでと違って広い住宅に喜ぶ美和子。
その間に政府は文京区の家を取り壊してしまいます。
広々とした今の家での暮らしにも慣れてきた頃、また政府から別のエリアへ転居するようにという要請が入ります。
転居先は表面上は整備されているものの、危険な物質が地中にとどまっている状況。
総一郎は自身が特A級市民から役に立たないというカテゴリーへと移されたこと、そして役に立たない国民がどのような形で国家に貢献するのかを悟った時、激しい怒りに駆られます。
多くの人々がベイエリアから立ち退き、反対派の人間が残った後、総一郎は彼らを集め政府へ宣戦布告します。
また、斎藤家の末娘、小夜子は成長を止める措置を施していたもののベイエリアにやってきてから変化があらわれはじめ…。
まとめ
非行の低年齢化が進み、学校制度は崩壊。
青年層の失業率は八十パーセント、性病の罹患率や乳幼児の死亡率が上がり、人口の高齢者増化もあいまって保険制度と年金制度が破綻。
そうした背景から家族主義を単位とする国家主義が復権した結果、超管管理主義国家となった日本。
「役に立たない」とラベリングされれば右へ左へ、将棋の駒のように動かされてしまいます。
これまで誇りを持って国家の歯車の一つとして働いてきた総一郎ですが、家族ごと放り出されてしまった現実を前に、一個人として斎藤家の家長として立ち上がり政府相手に戦いを挑みます。
極限状態でのサバイバル、「幸せ」の価値観。
時代や状況が変わっても大事なものは案外変わらないものなのかも、と感じるディストピア小説です。
<こんな人におすすめ>
徹底的な管理社会となった近未来の日本と家族のあり方を描いた話に興味がある
政府から「役に立たない」とされた一家が政府に戦いを挑む物語を読んでみたい
篠田 節子のファン


カースト制…。ここまでシビアに
権利が制限されちゃうって…
ものすごい疾走感だけど
ホロリとしちゃうぜ。

追い詰められた中で様々な方法で
生き抜こうとする彼らに
幸せって何なのかを
改めて考えさせられる物語ね。
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