
こちらは貧しい村から逃げ
銀の山で山師とともに暮らす
少女ウメの生き様とそこで
働く男たちを描いた物語よ。

銀山かあ。坑道で働く男たちや
山師は荒っぽい連中が多いんだろうなあ。
そんな中でウメはうまくやっていけるのか?

暗い場所でも目がよく見えるウメは
坑道へと物を運んだりして重宝がられるわ。
大きくなったら男たちと坑道で働き
新しい銀の道を探そうとしていたのだけれど。

なるほどね。やる気も能力も
あるけれども時代や環境によって
いろいろ規制もあったんだろうな。
ウメを待ち受ける運命とは
どんなものだったんだろう。
『しろがねの葉』千早 茜 (著)新潮文庫
あらすじ
貧しい村から一家で逃げ出す途中に、父母と生き別れとなった少女ウメは、銀の気が視えると謳われた稀代の山師・喜兵衛に拾われ、石見銀山の坑道で働きはじめる。
暗闇で目が効くウメは重宝がられたが成長とともに働く場所はなくなっていく。
男たちの活躍を支えていたウメだったが、彼らの体が蝕まれていくことをどうすることもできなかった。
銀の山に魅せられその闇と白銀の光、そして男たちに抱かれ共に生きる女の物語。
闇を恐れ銀を求める男たちと共に生きる
貧しさのあまり村の食糧を盗んだ父親に促され、夜逃げを図ったウメ一家は、途中で村人に見つかってしまいます。
母に「先に、いき!まっすぐ、日の沈む方へいきんさい!」と言われ一人走って逃げ出します。
日の沈む方へ、川の水を飲み、魚や木の実を取りながら幾日も進むウメの体は限界となり、薄れる意識の中で光る葦を見つけ手につかみます。
目がさめると大きな体と声の男が立っていました。
ウメは銀掘のために掘られた間歩という穴に入りこんでいたのです。
この男、喜兵衛に引き取られたウメはは、銀の山について教え込まれます。
銀の出る間歩を見つけること。
闇に馴染むことなく恐れなければならないこと。
そしてウメは女だから子を産みその子に銀を掘らせること。
「銀を見つけた者が生きられる」。
喜兵衛の言葉を胸に、闇の中でも目が効くウメは坑道で働く男たちのために道具を運ぶなどして重宝がられ、自分もいずれ銀掘として働くのだと思っていましたが、体の成長とともに坑道に入ることを禁じられ…。
まとめ
幼くして親と生き別れ、生まれ育った貧しい村とはまるで別世界の豊かな暮らしをしている石見銀山で、役人とは関係のない立場にありながら絶対的な力を持つ山師の喜兵衛に拾われたウメ。
銀掘のために掘られた間歩の、冷たくどこまでも底が見えないような闇に恐怖を抱きながらも、喜兵衛のように銀の道を見つけ出し男たちに負けぬ働きをしたいと考えます。
しかし体の成長に伴い、思うように体が動かなくなることもあり坑道へ入ることを禁じられます。
喜兵衛の不在時に見舞われたトラブル、幼い頃にはいがみ合っていた隼人との人生、そして喜兵衛との別れ。
深い闇の中で白々と輝く銀を求め集まる男たちと、彼らを守り支えそしてその山とともに胸のうちに銀を抱いて生きた一人の女の姿を描く、読後に深い余韻が残る物語です。
<こんな人におすすめ>
石見銀山で銀を掘り出す男たちとそれを支えた女たちを描く物語に興味がある
生きることの苦悩と官能を描いたたいが物語を読んでみたい
千早 茜のファン


銀を掘る仕事には就けなかったけど
男たちを支え共に生きることで
ウメは銀の道に生きたんだな。

女であるゆえの葛藤や苦境を
乗り越えて、男たちや銀を
包み込んだのはむしろウメの
ほうだったのかもしれないわね。
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