
こちらは学生時代からの仲良しで
50代後半となった女性三人組の
それぞれの日常を描く物語よ。

50代後半かあ。仕事である程度の
地位についていたり、子供が大きく
なっていたり、親の介護が必要に
なってきたりする世代かな。

そうね。離婚歴ありで独身、
イギリス帰りの理枝、年老いた
母親と二人暮らしで作家の民子、
専業主婦の早希は性格も境遇も
バラバラだけれども不思議と気が
合い、時間ができれば会っているの。

それだけ状況が違うのに
友情関係が続いているってのも
すごいな。学生時代からどんなところが
変わったり、また変わらなかったり
するんだろう。
『シェニール織とか黄肉のメロンとか』江國 香織 (著)ハルキ文庫
あらすじ
五十代後半になった民子、理枝、早希は学生時代から続いている仲良し三人組。
年老いた母と二人で暮らす作家の民子のもとへ、イギリスでの仕事を辞めた理枝が転がり込んできた。
専業主婦で大きな息子がいる早希にも声をかけ、三人はビストロで再開の祝杯をあげる。
彼女たちを取り巻く日々と三人の日常を楽しくおいしく、そしてちょっぴり切なく描く。
変わっていく部分と変わらない部分を友人との再開で認識
仕事を辞めて帰国するので、住むところが決まるまで泊めてほしい、と大学時代からの友人・理枝から連絡があり断る理由もないので承諾した民子。
作家業をしながら母と二人暮らしで気兼ねのない生活をしている上、理枝は民子の母とも気が合うのです。
二度目の結婚も終わり、今なお恋に生き甥を可愛がる理枝は、このところその甥の朔にふられたとワインを飲みながら民子にボヤきます。
民子は理枝の言動や行動に苦笑しつつも付き合い、老いた母親のことを母親本人が過剰だと感じるほどに心配しています。
そんな母のもとをよく訪れる若い男性、ジョンの存在に理枝は目をとめます。
一方、専業主婦の早希は施設にいる義母をたずねます。
定期的に訪問し、義母の様子を夫に話すものの、夫はろくな反応をしません。
理枝の帰国を祝って三人で食事をしようということになり店へ向かった早希は、久々の再会にちょっぴり緊張していましたが、会えばやっぱり変わらなかったり、変わったりした部分を彼女たちに感じ、自分もそう思われているのか、と考えたりします。
まとめ
人生の秋口とも言えるような五十代後半という年齢の女性たち。
変わらぬように過ごしている日々でも身体の衰えは感じるし、異性から見られる目もこれまでとは異なります。
親は歳を取り心配になるし、これからの若者たちに目を向けることで喜びを感じる自分を発見したり。
少しずつ「これまでの自分」と離れていくような寂しさを時には感じたりもするものの、「あの頃」を知る(忘れている出来事もあるけれど)友人たちと出会えばたちまち当時の力がよみがえってくる。
そんな力が彼女たちの間では働くようです。
小さなどうでもいいことを笑って語り合える。
そんな仲間がいれば、これからの人生も様々なことにぶつかったとしても互いに文句やグチを言いながら、何のかんの乗り越えていける。
そんな風に感じる物語です。
<こんな人におすすめ>
五十代後半の女性の友情を楽しく切なく描く物語を読んでみたい
変わっていく自分や周囲の様子、そして変わらない部分を認め日々を愛しく感じる話に興味がある
江國 香織のファン


お互いの状況もまるっとひっくるめて
認め合っているし、必要以上に
踏み込みすぎないところも
友情が続く一因なのかもしれないな。

自分のこれまでを知っていて
これからも見ていてくれる。
そんな存在がいることで
年を取ることも悪くないと
思えるのかもしれないわね。
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