江戸のおすすめシリーズ本 2020年1月現在未完のもの

はじめに

江戸時代の物語は、ちょっと堅そう。読みづらいのでは、自分にはまだ早い、あまり興味ない。そんなことを思っている方に、ぜひ!おすすめしたい、江戸を舞台にした小説たちをご紹介します。シリーズもので、2020年1月現在も継続中、つまり未完のシリーズを集めました。現代と異なる縛りの中で自分の芯となるものを貫き通したり、時代は変われど悩む問題は現代人と変わらないのだな、と共感してみたり。人間らしさがくっきりと形をなす江戸の物語は、魅力に満ち溢れているのです。

「推し」あやかしについて語りたくなる

『しゃばけ しゃばけシリーズ 1』 畠中 恵  著  ¥594 新潮文庫 

江戸の廻船問屋のひとり息子である若だんなは病弱で、少し動いてはすぐに寝付く。そんな若だんなの世話を焼くのは手代の佐助と仁吉。人ならざる者であった祖母のおぎんの影響か、若だんなの周りには付喪神や妖怪の類いが集まり、若だんなと和気藹々と暮らしています。若だんなのもとには江戸で起こる不思議な事件が持ち込まれ、布団の中から、調子の良い時には自ら足を運び、あやかしたちの手を借りながら事件を解決していきます。人の業や弱い部分、醜い部分を見つめ、自らと照らし合せながら成長していく若だんなに感動し、あやかしたちとのやりとりにほっこりしたりキュンキュンしたりと、楽しめる要素が満載のお江戸幻想奇譚。様々なタイプのあやかしたちが登場するため、誰かと「推し」あやかしについて語るのもまた楽しいかも。文庫版で現在16巻まで刊行中ですが、単発で買っても楽しめます。

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涙なしには読み進められない感動の物語

『あきない世傳 金と銀 源流篇』 髙田 郁 著¥580+税 ハルキ文庫 

九歳の時に大阪の呉服商へ奉公に出た幸。商品の知識や「物を売る」とはどのようなことなのかを熱心に学んでいきます。そうした部分を認められ、年頃になった幸は、なんと店の若旦那と結婚することに。大阪という町の、お得意様への訪問販売が中心だということなどのルール、仕入れに関する条件、商品広告のアイデアへなど、数々の困難に立ち向かいながらも常に「買うての幸い、売っての幸せ」の精神でものを見、知恵を働かせる幸に感心したり、エールを送りたくなったり。スタートから時は流れ、大切な人との別れ、店の新たな方向性など、幸自身の女性としての生き方と、仕事との両立の困難さも描かれ、その生き方には現代女性にも通じる部分があります。彼女がどこまでたどり着けるのか見守りたくなるシリーズ。文庫版で現在7巻まで。1冊につき、必ず数カ所で泣かされますので、ハンカチのご用意を。

自分と、菓子と向き合い成長していく少女の姿を描く

『望月のうさぎ―江戸菓子舗照月堂』 篠 綾子 (著) ¥682 時代小説文庫

七つの時に両親を火事で亡くし、十歳離れた兄は行方不明となったなつめは、尼僧・了然尼とともに江戸で暮らしています。幸せだった頃、京で食べた思い出の菓子をきっかけに「照月堂」という菓子舗と縁ができ、菓子職人の見習いとして働くことになったなつめ。菓子づくりの世界の奥深さを学び、菓子づくりへの思いを確固たるものにしていくなつめは、ただ美味しい菓子を作るだけではない何かを身につけていきます。ライバル店とのせめぎ合いや友情など、心を揺らす問題にも真摯に立ち向かうなつめの育ちの良さが好感を持てます。これまでの暮らしから蓄えてきた知識に加え、菓子づくりの実際の手順や心構えを学び始めたなつめの成長ぶりが楽しみなシリーズです。和菓子好きな方はもちろん、そうでない方にも江戸から今日に続く暦や行事と菓子の関わりなんかも知ることができる、素敵な物語。文庫版で現在6巻まで。

中身が詰まった「人間」を描ききる、一見ライトと見せて奥深い物語

『跡とり娘 小間もの丸藤看板姉妹』  宮本紀子 (著)  ¥734 時代小説文庫

日本橋伊勢町の小間物商「丸藤」は、紅やおしろい、かんざしなどを売る大店。「丸藤」には二人の娘がおり、幼い頃病弱であったために品川で暮らしていた姉の里久が戻ってきた。江戸の大店での暮らしぶりに戸惑う里久だが、そのまっすぐな物言いとはつらつとした態度が周囲を少しずつ変えていきます。品川では自然とともにのびのびと暮らしていた里久ですが、ここではお茶にお花、娘としての礼儀や嗜みなど、窮屈なことばかり。小町と呼ばれる妹の桃は、姉のガサツぶりに、母とともに思わずため息。しかし、商売に興味を持った里久は、お店の商品を売るためにあるアイデアを提供し、「売ることの楽しさ」に惹きつけられていきます。一見陽気でおおらかな里久ですが、その胸のうちには様々な思いが渦巻いており、彼女の健気さや悲しみに、読むものは胸を突かれるのです。そのコントラストが里久の人となりに厚みを持たせ、物語に奥行きを感じさせます。文庫版のみ現在2巻まで。ライトに読めるかと思いきや深い感慨を与えてくれる物語です。

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まとめ

現代よりも生活や考え方に制限がある江戸時代だからこそ、壁を乗り越えた喜びは大きく感じられるものです。熱い思いやひたむきさで、逃げることなく向かっていく登場人物たちから、勇気と感動、そして共感を得られる物語たちです。彼らの成長を楽しみながら江戸の世界を満喫できます。

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