こちらは庭師の仕事をしている青年が
ある少年の面倒を見ているのだけど
青年が長らく空き家になっていた家に
仕事に入ったことで彼の過去が明らかに
なっていくお話よ。
少年の面倒をねえ。
その子やその子の家族に対して
償わなければならないような
出来事があったんだろうか?
そうね。少年の祖母からは
蔑みや憎しみの目を向けられていたりと、
かなりきつい状況なのだけれど
献身的に少年を支えているのよ。
ほう。そんなにまでして
少年の面倒を見るなんて、そいつの過去に
どんなことが起こったんだっろう。
気になるな。
『雪の鉄樹』 遠田 潤子 (著) 光文社文庫
あらすじ
幼い頃に母親が家を出て行き、庭師である祖父とともに暮らし、自身も仕事を手伝う三十二歳の雅雪。
ある事情から雅雪は、両親を事故で亡くした少年、遼平の面倒を見続けている。
遼平の祖母、文枝からは心無い言葉を投げられるが、それでも遼平のために心を尽くす雅雪。
そんな雅雪が隠してきた過去を知った良平は、雅雪に怒りと憎しみの目を向けるのだが…。
「あの家」で起こった出来事とは
とにかもモテて、女の出入りが激しい祖父と父の様子から「たらしの家」と呼ばれている蘇我造園で、雅雪は祖父と庭師の仕事をしています。
お得意様から紹介された仕事は事件以来空き家となっていた「あの家」だったのです。
また、雅雪は祖母と暮らす遼平の面倒を、庭師の仕事をしながら十三年間見続けてきました。
しかし、同級生から雅雪の過去を知らされた遼平は酒を飲んで荒れ、「あの家」で酔いつぶれてしまったのです。
全てがはじまり、そして遼平の両親を喪うことへとつながったその家の庭には五本組の見事な「鉄樹」とも呼ばれる蘇鉄があったのです。
まとめ
雅雪は全身に火傷を負っているのですが、その原因は何なのか、そして遼平の面倒を見続けている理由も、なかなか明らかになりません。
ひたすら祖母の文枝に罵倒されたり、無視されたりとキツい描写が続きます。
中盤以降、雅雪の過去が明らかになったところで、雅雪が遼平の世話をすること、彼の人の愛し方、愛された経緯が明確になり、言葉を喪うほどの衝撃と感動の波が押し寄せてきます。
愛の喪失という負の連鎖から生まれる痛みと償いを経て再生へと向かう、心揺さぶられる物語。
<こんな人におすすめ>
ある少年の面倒を見ながら償いを続ける庭師の男の話に興味がある
愛と憎しみの連鎖、深い悲しみと絶望を描く人間ドラマを読んでみたい
遠田 潤子のファン
こ、こんな生き方、人の愛し方って
ある…?。゚(゚´Д`゚)゚。
容赦無くつながっていく
負の連鎖に苦しくなるけれども
最後の一筋の光が差し込むような
強く心を揺さぶられる物語ね。
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