こちらは2017年に直木賞と本屋大賞を
W受賞した『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ
短編集よ。
おお、あのコンテスタントたちと
また会えるってわけ?
そうね。コンクール受賞後の
彼らの姿のほか、彼らの師匠や
コンクール審査員、課題曲作曲者などの
物語も描かれているの。
へええ!あの音の世界を
作り出した人々の一部が
見えるのか。それはまた楽しみだな!
『祝祭と予感』 恩田陸 (著) 幻冬舎文庫
あらすじ
ピアノコンクールで優勝したマサルを連れて恩師の墓参りへとやってきた亜夜。
何故かいっしょについてきた塵が、日本の墓を珍しそうに眺める(「祝祭と掃苔」)。
コンクールの課題曲「春と修羅」を作曲するきっかけとなったのは、菱沼の教え子との出来事だった(「袈裟と鞦韆」)ほか、ベストセラー「ミツバチと遠雷」のスピンオフ六編を描いた短編集。
音楽に関わるものたちのそれぞれの物語
コンクール入賞者によるコンサートツアーの合間に、恩師の墓参りへ訪れたマサルと亜夜。
関係はないけれど、塵も興味を示し、二人のあとについてきます。
そこで三人は塵の家族のこと、コンサートで弾く曲のこと、進路のことなど、様々なことを話します(「祝祭と掃苔」)。
教え子の葬式から帰った菱沼。
実家が岩手のホップ農家だという教え子は「広い」空気をまとい、そして頭の中の音を音符に表しきれないことに悩んでいました。
実家に戻り、家業をしながら作曲活動を続けていたようなのですが…(「袈裟と鞦韆」)。
まとめ
コンクール課題曲の作曲者、審査員であるピアニストの若かりし頃、恩師とマサルの関係、相棒となる楽器との運命的な出会い。
音によって聴くものを魅了する世界を創り出す人々の周囲にはまた、強い光と熱に満ちた人生があるようです。
自分が受けたその光と熱を取り込み咀嚼し、自分なりの解釈と表現で新しい世界を紡ぎ出す。
その音に、色や温度を感じさせてくれるような、音楽の女神に愛された人々のスピンオフ短編集です。
巻末には音楽関連誌に寄せた音楽エッセイも。
登場する楽曲をすぐにでも聞きたくなる、まさに「音を楽しむ」短編集&エッセイです。
<こんな人におすすめ>
音楽に関わる人間たちの、外からは見えない部分を描いた物語に興味がある
『蜜蜂と遠雷』を読んだ
恩田陸 のファン
短編集だけど、やっぱり
「音」を感じられる文章だよな!!
巻末のエッセイを読むと、掲載されている
曲を聴きたくなってくるなあ。
音の世界に生きる喜びと苦しみが
短い中にぎゅっとつまっている
スピンオフ短編集ね。
前作『蜜蜂と遠雷』のイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます。
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