こちらは下北沢の小さな書店を舞台に
店主夫婦とお客たちが織りなす
人間模様を描いた物語よ。
下北沢か。小さな劇場や映画館、
それに個性的な人間が集まって
いる町というイメージだな。
そうね。本屋の店主も強いこだわりが
あって集客に苦労しているようよ。
そんな時代の常連さんが十数年ぶりに
お店に訪れるの。彼女は若い頃夫を
事故で亡くしていて、本屋には若い男性を
連れてきたのよ。
おお!そりゃめでたい!
…んだよな?
本人と周りのやつらは
どんな思いでいるんだろう?
『燃えよ、あんず』藤谷 治 (著)小学館文庫
あらすじ
下北沢にある小さな書店「フィクショネス」。
こだわりが強く、なかなか売上が出ない店主が知恵をしぼり、様々なイベントを実施。
その結果、個性豊かな面々がこの店に集まるようになる。
常連の一人、久美ちゃんは結婚したがその幸せは続かず。
それから十数年後、久美ちゃんはもう一人の懐かしい常連とともに店にあらわれた。
あの久美ちゃんがふたたびあらわれた
取次を通さず、買い取りした本を売る、というやり方で本屋をはじめた店主。
売り上げが出ないため「文学の教室」というイベントを開きます。
これをきっかけに常連となった二十一歳の久美ちゃんは立ち読みと長話ばかりだが、明るく憎めない女の子で、店主の妻とも仲良しに。
そんな久美ちゃんが結婚してほどなく、夫が事故で亡くなり、彼女は奈良にある夫の実家で暮らすことを決意。
それから十数年後、ふいに久美ちゃんはかつての常連の一人、由良とともに店にあらわれました。
東京へ戻り、由良の紹介で働きはじめた久美ちゃんは、以前のようにまた本屋にも顔を出します。
ある日の店内でのチェス将棋イベントに、久美ちゃんが若い男性と二人で参加。
二人は付き合っているのか?そうであれば久美ちゃんには是非幸せになってほしい、と願う周囲の面々ですが…。
まとめ
どこか抜けたり欠けたりしているけれども憎めない面々が、本屋の常連仲間である久美ちゃんの幸せのために奔走します。
ぶつかり合ったり、意地を張ったり、うまくいかないこともあるけれど、根底には大きな愛が流れているのが感じられます。
コミカルなやりとりに笑いつつ、ラストでは大きく心を揺さぶられる、愛と笑いと感動の物語です。
<こんな人におすすめ>
下北沢を舞台にしたドタバタ人情劇に興味がある
登場人物たちがどこか抜けているけれど憎めない物語を読んでみたい
藤谷 治のファン
すんごいな!みんな個性の塊!!
笑いつつも、いつの間にか俺も
お客の一人になって久美ちゃんの
幸せを願っていたぜ!
空回りしてしまうこともあるけれど
本屋を絆とした登場人物たちが
久美ちゃんの幸せのために力を尽くす姿に
感動する、胸が熱くなる物語ね。
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