こちらは刃物で刺されて殺害された
後輩の服を身にまとい
犯人を探し出そうとする物語よ。
ええ?つまり被害者と同じ
格好をするってわけか?
それって危険じゃないのか。
後輩の好んだ服を着たりメイクを
したりして、通っていた大学や
バイト先など関係のあった人物と
接触をはかるわ。
犯人を見つけてどうしようと
言うんだ?第二の被害者に
ならないといいが…。
『焼けた釘を刺す』くわがき あゆ(著)宝島社文庫
あらすじ
同じ小学校出身で四つ下の萌香が、帰宅途中に何者かに襲われ、何度も刃物で刺されて死亡した。
彼女の通夜に訪れた千秋はそっと彼女の部屋から何点かの衣服を盗み出す。
彼女の服をまといメイクを施し、彼女のアルバイト先や大学へ行き萌香と関係のあった人物たちに接触を図る。
一方、ブラック企業に勤める杏は毎日怒鳴られる中、唯一優しい先輩とのひとときに癒されていた。
しかし先輩が同僚と付き合っているかもしれないという懸念がわいてきて…。
後輩を殺した犯人を探し出す
ほんの二週間前にコンビニの前で会話を交わした萌香が死んだことを知り、驚く千秋。
どうやらストーカーにつきまとわれていたらしく、おかしなメールも受け取っていたようです。
通夜で焼香の列に並んでいた千秋は「萌香は、俺のだろ」というつぶやきを聞きハッとしますが、誰が発したものなのかわかりませんでした。
萌香の服とメイクを真似た扮装をして、彼女のバイト先や大学を訪れては探りを入れていきます。
一方、ブラック企業で働く杏は思うように成果が出せず罵倒される日々。
先輩も怒鳴られたりしてはいるものの、飄々としてマイペースに見えます。
さらに杏に気を使ってくれる優しい面もあり、次第に惹かれていきます。
しかしある日、思わぬ場所で先輩を見つけ、さらにその後から同僚が向かっていくところを発見し、二人は付き合っているのかとショックを受けるのですが。
まとめ
千秋と杏。
一見何の関連もないかのように見える二人の人物の人生が交錯するとき、それぞれが表に出すことのなかった内面が浮かび上がってきます。
後輩を殺害した犯人を見つけ出そうとする千秋は、心無い言葉を投げられたり危険な目に遭うことも。
一方で大人しそうな杏も、内面では嫉妬と諦めが交互に現れ意外と強い思いを抱く面もあるようです。
そうした表面を丁寧に描いていることで、彼らや周囲の人間が何を抱え隠しているかが明らかになったとき大きな衝撃を受けるのです。
不穏な空気をまとった緊張感のある雰囲気と、グイグイ読ませてくれるスピーディーな展開で一気読み必至のミステリーです。
<こんな人におすすめ>
殺された後輩の姿を真似て、犯人を探し出そうとするサスペンスを読んでみたい
嫉妬や復讐などといった様々な感情や思惑が複雑に入り乱れた物語に興味がある
くわがき あゆのファン
おお〜 これはお見事!だな。
細心の注意を払って緻密に
描かれているのがよくわかる。
丁寧に描かれた人物像と
それを取り巻く背景が
意外な結末への驚きを
より大きく感じさせるのよね。
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