
こちらは「月昴」と呼ばれる
病気が蔓延した世界を描く
物語よ。

ほほう。月が関係しているのか?
いったいどんな病気なんだ?

月の満ち欠けにより身体能力に
変化が訪れるの。政府は感染者を
捕獲して閉じ込める方策を実施。
月昴者同士を戦わせる格闘技も
あり、主人公はそこで選手として
戦うことになるわ。

えええ。そんなに怖い病気なのか?
しかも感染者同士を戦わせて
見世物にするのか。ううむ。
主人公はどんな思いでいるんだろう。
『残月記』小田 雅久仁 (著) 双葉文庫
あらすじ
近未来の日本では「月昴」と呼ばれる感染症が人々を脅かしていた。
彼らは独裁者により療養所の独房に閉じ込められていたが、体格の良い冬芽は月昴者同士が勝ち抜きで戦う格闘技の選手として出場することになる。
冬芽が闘い続けた理由とは。
女と生きるために闘う道を選んだが
月の満ち欠けにより躁うつの症状が出る「月昴」は、躁状態の時に身体能力や制欲などあらゆる能力が高まるため芸術面で成果を出す人間もいたものの、その力が犯罪の方へと現れる人間もいたため、政府は月昴者を発見し次第療養所に閉じ込めるという方策を取っていました。
月昴を発症し捕らえられた冬芽は、剣道を続けていた経験と体格の良さからアリーナで月昴同士が戦う競技の闘士にスカウトされます。
試合に勝てばそのたびに女を抱ける、という言葉につられて参加した冬芽は勝利勲婦と呼ばれる月昴者を専門に相手をする、月昴の娼婦の中からルカという地味な女性を選びます。
森のような涼しげな香りを漂わせたルカに、ふいに俺の女だという思いを強く感じた冬芽は勝利を重ね、その都度ルカを指名し二人の間には親密な空気が築かれていきます。
この勝負に勝てばルカを今の仕事から解放させて、二人で暮らせる療養所に移ることができる。
そんな大切な試合を控えたある日、一人の男が冬芽のもとへとやってきてある提案を持ちかけます。
まとめ
月の状態に合わせて身体能力が超人級に高まる月昴は、飛沫感染で潜伏期間も数日から数年と幅広く、発症しない人間もいます。
また発症時の発熱などにより命を落とすことも。
そこを乗り越えた月昴者は、見つかれば即療養所行き。
その療養所も刑務所と何ら変わりのない環境です。
そんな中、闘士として生きることを選んだ冬芽はルカと出会い、彼女と生きていく道を目指しひた走るのですが。
感染者を隔離して幽閉し、あげくに闘わせて見物するという人間の尊厳を踏みにじるような政治家たち。
そんな状況の中で愛を貫いた彼らの美しく尊い姿に切ない涙があふれる感動の物語です。
<こんな人におすすめ>
近未来のディイストピア世界とそこに生まれた愛を生きる人々を描いた話を読んでみたい
月をテーマに想像もつかないもう一つの世界で営まれる世界を描く物語に興味がある
小田 雅久仁のファン


月が背景にあるせいか
戦いのシーンもあるけれど
静謐で美しい物語だなあ。

運命に流されているようでも
あるけれどたったひとつの
愛だけは貫いた感動の物語ね。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。