こちらは『三島屋変調百物語』
第七弾よ。おちかの後を継いで
聞き手となった富次郎のもとに
やってきたのは粋な老人が
十五の頃に起こった話をするの。
ほほう。その老人は当時
どんなことを体験したんだ?
彼の実家の木賃宿にやってきた
奇妙な宿泊客の話よ。その客は
奇妙なものを連れてきていたの。
このシリーズの流れからいくと
めっちゃ怖そうな感じなんですけど…(||゚Д゚)?
『魂手形 三島屋変調百物語七之続』
宮部 みゆき (著) 角川文庫
あらすじ
「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」袋物屋の三島屋ではこんな風変わりな百物語をしている。
嫁いでいったおちかから「聞き手」を継いだのは次男坊の富次郎。
語り手からの話をのちに墨絵に描き、桐の箱に封じ込めて聞き捨てとしている。
そんな富次郎のもとへ一人の老人がやってくる。
富次郎も見ほれるほど粋なじいさまは、十五の頃、実家の木賃宿で起こった話をはじめた。
木賃宿にやってきた不思議な宿泊客
吉富と名乗る老人は今から五十五年前、十五の頃実家である深川の河岸の木賃宿で暮らしていました。
幼い頃、母親が宿泊客と駆け落ち。
祖母や父を手伝い、弟たちの面倒を見る吉富は、祖母にいつも叩かれていました。
しかし大柄で口の悪い女、お竹が奉公人としてやってきてから事態は一変。
お竹は祖母を怒鳴りつけ、ののしります。
その恐ろしさに縮み上がった祖母は、三月後に卒中で息を引き取ります。
父はお竹と夫婦に。
お盆の頃、妙な客がやってきます。
荷物が少なく身軽で、手形を確認すると見たことのない、赤い蝋で封じた文書。
金は持っていたので狭くても汚くてもいいから角の部屋を、というこの客を受け入れます。
この客は迷った魂を説教したり、面倒を見る水夫なのだといいます。
彼が連れていたろくろ首のような姿の、水面と言う名の魂に驚き気を失ったりしながらも、彼女の身の上話を聞いた吉富はある決意をします。
まとめ
継母に嫌われ、ついには殺されてしまった迷える魂・水面と、血はつながらなくとも大きな愛に包まれるようにお竹に育てられた吉富。
その愛を力に水面の怒りの根元を絶つために吉富は動き出します。
愛を受けられないもどかしさや苦しみも、まっすぐで素直な吉富のおかげで溶けていくようです。
愛を知り、受け止め、与える。
そんな吉富の体験と人柄が彼の「粋」な姿となって表に出ているのです。
そんな風に感じる「三島屋変調百物語」シリーズ第七弾です。
<こんな人におすすめ>
あの世とこの世をつなぐ不思議な仕事を描いた江戸の物語に興味がある
『三島屋変調百物語』シリーズのファン
宮部 みゆきのファン
怖いんだけど愛に満ちた
清々しさも感じるな。
迷える魂の水面も彼らに出会えて
幸せだったんじゃないだろうか。
まっすぐに義母からの愛を受けた
吉富が、そのまっすぐな愛を
水面を救う力に使っていく。
そんな姿と彼らのやりとりに感動する
シリーズ第七弾ね。
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