
こちらは人の心を読むことができる
大学生、梨木がアルバイトの同僚が
心を固く閉ざしていることを気にかけて
何とかしようと奮闘するお話よ。

人の心を読む?超能力か?
そんな能力があったら
誰とでも仲良くやれそうだな。

本人は困った人を助けるために
その能力を使っているようだけど。
心を閉ざした同僚から不思議な声が
聞こえてくるのよ。

え、なになに今度は怖い話?
その声と同僚が心を閉ざして
いることは何か関係があるんだろうか。
『掬えば手には』瀬尾 まいこ (著)講談社文庫
あらすじ
見た目も、頭の出来も運動神経も何ひとつ突出したところがない、ごく普通の大学生・梨木匠。
しかし、人の心が読めるという特別な能力に気づいてからは、口と性格が悪いと評判の店長がいるオムライス店でも難なくアルバイトを続けることができている。
ところが、新たに店で働くことになった常盤さんの心は硬い空気をまとい、なかなか開いてくれなくて…。
人の気持ちがわかる梨木が取る行動
中三の頃、不登校だった三雲さんが久しぶりに登校することになり、緊張した彼女の様子を見ていた梨木は、教室の中で唯一半袖を着た彼女から「夏服、大丈夫かな」という思いがにじみ出ているのを感じます。
固まっている彼女の前で梨木は立ち上がり学ランのボタンを外すと、パジャマ代わりに着ているダサいTシャツを披露したところ教室の空気がやわらぎ、三雲さんが動き出して席につくといった出来事がありました。
これをきっかけに人の心を読めることに気がついた梨木は、大学生になってバイトを始めます。
時給はいいけれど店長の口が悪く、一週間以上続いた人はいないというオムライス店。
バイト初日、店長の罵倒や悪口を聞きまくった梨木はほとほと疲れてしまいます。
なおも悪態をつく店長の表情の奥には「どうせこいつもすぐ辞めちまうんだろうな」という言葉が浮かんでいて…。
店にとっては新記録となる、勤務期間がバイト開始から半年を過ぎた頃、新人のバイト・常盤さんが入ります。
クセのある店長のもと、何とかバイトを続けてもらおうとあれこれ気を配る梨木ですが、彼女は堅くよろいのような空気をまとい、打ち解けようとする気配もありません。
そんなかたくなな態度を見せる常盤さんの背中から「気にかけてくれてありがとう」という声が聞こえてきます。
彼女が思っているとは考えにくく、声も違うのです。
それでも確かに常盤さんの背中から聞こえたことを、不思議に思う梨木ですが。
まとめ
困っている人や表に出せない悲しみや苦しみを抱えている人。
そんな彼らの思いをくみとり、なんとか力になりたい。
そんな梨木は偽善者というわけではなく、自身は何も秀でたものがなく、唯一持つ他人の思いがわかる能力を活かすために行動します。
そんな風に人と関わろうと、力になろうとし続ける梨木の言動や行動は彼だけが持つ、人を動かす大きな力となるのです。
人を思う、その純粋な部分に心を打たれいつまでも心の中がぽかぽかと温まる、そんな風に感じる物語です。
<こんな人におすすめ>
平凡だが人の心を読む力を持つ大学生がアルバイト先でスタッフたちと交流する話に興味がある
他人の心に寄り添おうとする誠実な青年の姿を描いた物語を読んでみたい
瀬尾 まいこのファン


いいなあ。あちこち別方向を
向いていた仲間たちが
同じ目線になっていくのって
じーんとするな。

人が人を思うその心が
固くなってしまった部分を
やさしくほぐしてくれるのかも
しれないわね。
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