こちらは『自由研究には向かない殺人』
の前日譚よ。主人公のピップが
事件の研究に取り組むきっかけとなった
出来事を描いているの。
へえ〜 ピップがあの事件を
調べるきっかけになった出来事か。
どんなことがあったんだ?
友人たちが集まって
犯人当てゲームをするの。
それぞれが登場人物になりきって
発言し、犯人を探っていくのよ。
自分が犯人の可能性もあるわ。
なるほど。自分も当事者の
一員として演じつつ
自分とみんなのアリバイを検証して
推理していくわけか。ピップはどんな
推理をするんだろう?
『受験生は謎解きに向かない』
ホリー・ジャクソン (著), 服部 京子 (翻訳)創元推理文庫
あらすじ
17歳の高校生、ピップのもとに一通の招待状が届いた。
友人・コナーの家で開かれる、架空の殺人事件の犯人当てゲームへの誘いに招待されたメンバーは、指示された配役を演じ、発言する。
舞台は1924年、孤島に建つ館で、主人が何者かに刺殺されたという設定。
様々な状況やメンバーの発言を分析し、推理を深めていく作業に、ピップはのめり込んでいく。
そしてたどりついた真実と事件の犯人とは。
ゲーム仕立ての殺人事件の謎を解く
試験を終え、久しぶりに仲間たちと集まることになったピップ。
コナーの家でのマーダー・ミステリ・パーティーの招待を受けます。
この犯人当てゲームでのピップの役割は、レミー一族の当主・レジナルドの姪であるシーリア。
1924年を意識したローウエストのイヴニングドレスが最適、と服装の指示も。
レジナルドの長男・ボビーはアント、次男・ラルフはザック、ラルフの妻はローレン、執事のハンフリー・トッドはコナー、屋敷の料理人・ドーラはカーラ、そして殺害されるレジナルドとハワード警部の二役をコナーの兄・ジェイミーが担当します。
互いの扮装や話し方にクスクスと笑ったり、もとの名をうっかり呼んだりとぎこちない雰囲気で始まったゲームですが、様々な証拠が発見されたり、おかしな証言や内容の食い違いが出てくるにつれ、皆の表情は真剣なものになっていきます。
楽しんでいるフリをしないと、と最初はどこか冷めた感覚で参加していたピップも、メモとペンを手に情報を細々と分析、整理し、推理し、また登場人物の一人として自分自身を疑ってみたり、ヒヤッとしたりという体験をします。
そして、ただ一人、とっておきの情報を手に入れたピップは、自分の頭の中の歯車が高速で回り出すのを感じるのです。
ピップがたどりついた真相とは。
まとめ
真実を探る高校生ピップの「エピソード0」の物語です。
犯人当てゲームに参加したピップは、事件に関わる容疑者の一人として、また犯人を当てるための探偵として、与えられた情報から推理を重ねていきます。
情報を並べ、また角度を変えて眺め、ピタリとはまる真実へと行き着く。
その楽しさに夢中になるピップはさすがだと感じさせるとともに、好奇心を止めることのできない危うい部分も感じさせます。
このゲームを体験したことで未解決事件の研究へとつながっていく。
その流れが実に見事で、三部作を完結させた後にこの作品で見られるピップのはつらつとした明るさに胸がギュッとなります。
彼女の歩んできた道に思いをはせる、その第一歩以前を描いたミステリーです。
<こんな人におすすめ>
犯人当てゲームで推理の楽しさに目覚めた女子高生を描いたミステリに興味がある
『自由研究には向かない殺人』3部作を読んだ
ホリー・ジャクソンのファン
なるほどねえ。ピップの
『真実の捉え方』ってのは
ここから始まっているのかも。
またこの頃の登場人物たちの
明るさが切ないな…。
ピップが推理にはまる様子が
生き生きと描かれているわね。
後の三部作を思い出しながら
この作品を読むと一層感慨深いものを
感じられるわね。
ピップが事件の謎を解くミステリ3部作のイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます。
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