こちらは銘探偵メルカトルと
事件に巻き込まれやすい作家・
美袋が殺人事件の謎に挑む
ミステリー短編集よ。
ああ、一癖も二癖もある
『銘探偵』メルカトルね。
今回はどんな事件が起こるんだ?
美袋がある事件の容疑者に
されてしまうのよ。そこで
メルカトルに真犯人を見つけて
欲しい、と頼むのだけれど。
メルカトルのことだ。
事件の謎は華麗に解きそうだけど
どんな見返りを要求されるのか…。
『メルカトルと美袋のための殺人 』
麻耶 雄嵩 (著)集英社文庫
あらすじ
大学の友人に誘われ、湖の近くに建つ別荘へとやってきた推理作家の美袋。
同じく別荘に来ていた佑美子に心を奪われ、一夜を共にする。
しかし、ほどなくして彼女は死体となって発見され、状況から美袋が容疑者とされてしまう。
美袋はメルカトルに連絡し、真犯人を見つけてくれ、と頼み込む(「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」)。
奇才を放つ銘探偵、メルカトルが七つの謎を解く短編集。
別荘での殺人事件の容疑者になった美袋
大学の友人、増岡の恩師である大垣の別荘へとやってきた美袋。
増岡の所属していた歴史クラブのメンバーが毎年同窓会も兼ねて集まる場に美袋も招かれたのです。
遊歩道沿いの林のなかで佑美子と顔を合わせ、前日は何とも思わなかったのにやけに彼女が美しく見え、美袋は自分でもドギマギしてしまいます。
何気ない会話を交わしたその夜、風に当たろうとテラスへ出た美袋は、涙を流す佑美子を発見。
放っておけず彼女を抱きしめ、そのまま夜を共に過ごします。
翌朝には何事もなかったように振る舞う佑美子。
何かを抱えるかの様子の彼女を気にかける美袋。
しかし彼女は書斎で死体となって発見されます。
また、キッチンでは大垣が花瓶で頭を殴られ殺されていました。
二人の関係に悩んだ佑美子が大垣を殺害した後に自殺したのか。
あるいは残ったメンバーの中でアリバイがない者が犯人なのか。
そして全員の証言を確認したところ、美袋が犯人として疑われる事態に。
たまらず美袋は藁にもすがる思い出メルカトルに助けを求めるのですが…。
まとめ
「君が犯人だよ。話を聞く限り」と期待を裏切らない言葉で登場した銘探偵、メルカトル。
宿泊者たちに冷たい視線を浴びながらも「もうすぐチェックメイトだ」と自信満々に発言。
翌日、確認したいという山中でメルカトルが美袋に語った驚きの真相とは。
今回も美袋の窮地を救うことに対し、自分の書いた原稿の掲載を要求したり、時にはその真相にまで手を加えたり…。
正義と推理が全くもって結びつかない、味方になってもその推理力は信頼できても人間性は信用できないメルカトルが、脱出不可能な密室殺人から関係者全員にアリバイが成立する不可能犯罪までを鮮やかに解いていきます。
そんなメルに翻弄される推理作家の美袋のワトスン役がいい味を出していて、メルのむちゃぶりがいっそう引き立ちます。
推理もキャラも一味違う、銘探偵が活躍するミステリーです。
<こんな人におすすめ>
正義感とは縁遠いが優れた推理力を持つ探偵が活躍するミステリを読んでみたい
メルカトルが活躍するミステリーが好き
麻耶 雄嵩のファン
推理力はさすがなんだけど
この正義感とかモラルの迷子感が
メルカトルなんだよな。他に
類を見ない探偵だな。
素晴らしい推理もさることながら
その結果がどんな結末に導かれるのかと
いうところまでが予想がつかず
面白いところでもあるミステリね。
メルカトルが活躍するミステリーのイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。