こちらは人間社会にまぎれて
暮らす神様と人間のあたたかな
やりとりを描いた連作短編集の第3弾よ。
結構粋なことする神様も
いたりしておもしろいよな。
今回はどんな風に人間と
関わっていくんだ?
どんな状況でも必ず間に合わせる
タクシー運転手や田畑を視察する
業者のような姿で現れたりするの。
へええ。人間が神様と出会う
シチュエーションもいいんだよな。
神様とのやりとりも楽しみだ。
『すべての神様の十月(三)』
小路 幸也 (著)PHP文芸文庫
あらすじ
ダメになってしまったロケ用の食材を時間内にそろえる、出張先から危篤状態の父のもとへ向かう。
絶対に間に合わない状況なのに何故か時間内に送り届けてくれるタクシー運転手の正体とは(「間に合わせます」)。
人のまとうオーラのようなものが見えるわたしは、うちの畑のそばで話をしている、作業着姿の二人の男の人を見かけます。
わたしが話しかけると、二人のうちの一人が「この子、俺たちのこと見えてるじゃないかよ」と言い出して…(「地味過ぎる」)。
気まぐれで優しい神様たちと人間との縁を描くシリーズ第三弾。
どんな状況でも間に合わせるタクシー
久しぶりに高校・大学と一緒だった鮫島と顔を合わせた神原。
先日菅原の父が亡くなったことが話題に上がります。
出張先の九州で危篤の連絡を受けた神原は、慌てて飛行機に乗ります。
心の中でなかばあきらめながらも、タクシーに乗り行き先の病院の名を告げた神原。
すると運転手が振り返り「緊急ですか?」とたずねました。
父が危篤で、と話すと「間に合いますよ」と運転手。
そして父の死に目にはギリギリ間に合ったものの、タクシーがどこをどう走ったのか覚えていないのです。
聞いたいた鮫島も不思議な体験をしたと言います。
ロケ用に準備していた食材がダメになっていて、ロケ開始までに再び食材をそろえなければならない状況に。
全部そろえるのは難しいかも、と思いつつ乗ったタクシーの運転手は、事情を聞き、店まで連れて行ってくれたため、撮影は無事終了。
同一人物らしいこのタクシーの運転手の正体とは(「間に合わせます」)。
小さな頃から幽霊っぽいものや、妖怪みたいなものが見えるわたし。
川が氾濫して冠水してしまったうちの畑を眺めている、作業着っぽい服を着た二人連れの男性を見かけ、話しかけます。
土の状態を見ていた二人は土と火の神様なんだとか。
風神とか雷神とかと違って地味なんだよねーと嘆く土の神様のお仕事とは(「地味過ぎる」)。
まとめ
日常生活の中で起こる不思議な、ちょっとした幸せを感じるような出来事が起こったら、それは知らぬうちに神様と関わったからかもしれません。
神様が口にする何気ない言葉から、人々をあたたかく見守ってくれている様子が感じられる、読めば思わず笑みがこぼれる物語です。
<こんな人におすすめ>
人間社会に紛れ込む神様と人間のちょっとした、心あたたまるふれあいを描いた物語を読んでみたい
『すべての神様の十月』シリーズのファン
小路 幸也のファン
あっ 死神がこんな形で登場している…!
どの神様との出会いもいいよな。
つい顔がほころんじゃうぜ。
時には思いがけない形で
人間の前に姿を現す神様たち。
そんな神様たちに見守られて
いると感じられる、胸があたたかくなる
物語ね。
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