こちらは元小学校校長で
レビー小体認知症に罹っている
祖父が、小学校教師の孫娘が
持ち込む謎を解くミステリーよ。
安楽椅子探偵か。
レビー小体認知症ってどんな
症状が出るんだ?
幻視や記憶障害の症状があるわ。
調子の良い時には以前の鋭い頭脳が
蘇り、真相にたどりつくの。
なるほど。条件付き名探偵って
ことだな。いったいどんな謎を
どうやって推理していくのか。
気になるぜ。
『名探偵のままでいて』小西マサテル (著)宝島社文庫
あらすじ
公立小学校の教師をしている楓には、かつて小学校の校長をしていた祖父がいいる。
本好きで、頭脳明晰だった祖父は現在、レビー小体認知症に罹り、幻視や記憶障害などの症状がある。
しかし楓の口から身の回りで起きた謎を話すと、祖父の灰色の脳細胞はいきいきと動き出す。
いくつもの謎を持ち込み、祖父の推理に感嘆の声をあげていた楓だが、彼女自身の人生に関連する事件に巻き込まれることに…。
名探偵はレビー小体型認知症
たくさんの本を読み、また物語を作ることにも長けていた、楓の自慢の祖父は、レビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしています。
眠ることが多くなったり、記憶障害があったりしますが、祖父の場合は幻視を自覚しており、そこがやはり知的な祖父らしいと感じる楓。
祖父の影響を受けミステリ好きになった楓は、ネットで著名なミステリを愛する評論家の評論集を購入。
ページを開くと著者が亡くなった時の訃報記事の切り抜きがいくつも出てきました。
これは日常のミステリであると考えた楓は祖父にこのことを話します。
この日調子が良さそうに見えた祖父は楓に一本の煙草をせがみ、一服すると「楓はこの材料からどんな物語を紡ぐかね」と。
まるで病にかかる前の祖父が戻ってきたようだと興奮する気持ちを抑えつつ、楓は自分の推理を話し出します。
しかし、祖父の鋭い指摘によりたちまち論破されてしまいます。
そして祖父は「今、”絵”が見えたよ」と言い、謎の真相を話し出します。
これは間違いない…と確信した楓の前で祖父の幻視が始まるのでした。
いくつもの謎を祖父に持ち込みその推理に感心したり驚いたりしていた楓ですが、彼女の周辺に不穏な影がつきまとうようになり…。
まとめ
名探偵は元小学校校長で認知症を患う安楽椅子探偵。
物語の世界を愛し、それがもたらす力を信じる彼は、頭脳がクリアになっている間のみ、その明晰な頭脳と物語を紡ぐ力を発揮し、真相を導きだします。
祖父や楓、楓の同僚やその後輩など魅力的なキャラクターが多く登場し、バランスよくそれぞれの役をこなします。
真相を語る場面では本好きならではの表現と、驚くべき仕掛けが。
ミステリ好きにおすすめの「物語のおもしろさ」を改めて感じさせてくれる一冊です。
<こんな人におすすめ>
レビー小体型認知症を患う安楽椅子探偵のミステリに興味がある
物語を愛する祖父が日常の謎を解く物語を読んでみたい
小西マサテルのファン
タバコを一本吸っての
解決シーンがかっこいい!!
そしてまたこんな結末が
待っているとは!!
本格的なミステリの流れを汲みつつ
その機能が限定的という名探偵。
クライマックスシーンもハラハラする
一気読み必至のミステリーね。
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