こちらは歴史ある高級ホテルが
改装のために休業することになり
最後の営業日にやってくる
お客たちの運命が交錯していくお話よ。
このホテルに思い出のある客たちが
やってくるのかな?
「一度来てみたかった」という思いで
最後の夜を楽しもうとするお客も
いるわね。それから追い詰められた人物も
やってくるの。
ええ!?そりゃあ何かが
起こりそうな予感が
するな…。
『ヴィクトリアン・ホテル』下村 敦史(著)実業之日本社文庫
あらすじ
高層ビルが建ち並ぶ都内の一等地にあるヴィクトリアン・ホテルは、日本有数の超高級ホテル。
百年の歴史があり、全面的な改築工事を控えておりいったん休業することに。
最後の夜を楽しむためにやってきた宿泊客たちが、それぞれの思いを胸に過ごす夜、彼らの運命が複雑に交錯していく。
老舗ホテルの最後の夜に宿泊客たちの思いが交錯する
老舗の高級ホテル、ヴィクトリアン・ホテルは改築工事のために一時休業することに。
現在の姿のホテルで一夜を過ごそうと、最後の営業日には様々な宿泊客がやってきます。
演じることに迷いが生じた女優、佐渡島優美。
大女優だった母を超えてみせる、と心に決めたものの、ドラマで演じる役柄にSNSでクレームをつけられてしまい、今まで通りの演技ができなくなってしまったのです。
また、金を用意できずに切羽詰まった状況に追い込まれた三木本貴志はホテルの『鳳凰の間』に紛れ込みます。
会場は作家の受賞パーディーのようで、高級料理が並ぶブッフェで料理を皿に取り夢中で食べていると「もしかして、時沢先生ですか?」と声をかけられます。
人違いをされているようですが、下手に返事をしては怪しまれると考え曖昧な態度をとる三木本ですが…。
また、年老いた夫婦の林敏行と志津子は初めての高級ホテルに感激しています。
ちょっとぜいたくしてホテル内のレストランで食事をします。
イタリアンの料理はどれも美味しく、「本当、来てよかった」と言う志津子に同意する俊行は「…最期だものな、俺たちの」と答え…。
まとめ
演技に悩む女優、追い詰められた男、いわくありげな老夫婦。
百年の歴史を持つホテルに集まった人々は、その最後の夜をどのように過ごしていくのかを描きます。
ホテルの中で声をかけ合ったり、思わぬ場所で遭遇したりして、互いに関わり合うことで彼らの運命もまたこれまでと異なる方向へと動き始めるのです。
一人ひとりの問題とホテルに関する描写にはきめ細やかな仕掛けが施されていて、驚愕のラストへとつながっていきます。
多くの人々が宿泊するホテル。
そこに泊まりホテルを利用する一人ひとりの人間にもまた人生があり、この場の関わりでその後の人生に影響を与えることもある。
そんな風に感じる、ドラマチックで感慨深い物語です。
<こんな人におすすめ>
老舗高級ホテルの最後の夜に起こる人間ドラマを読んでみたい
ホテルの宿泊客の思惑や人生が交錯する物語に興味がある
下村 敦史のファン
こんな風にいろんな人物の
人生が交錯していくって
すごいことだな!
何よりこの仕掛けがすごい!!
老舗ホテルならではの
多くの宿泊客たちの人生を
見守ってきたから生まれた
物語なのかもしれないわね。
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