こちらは幼い頃に自分を捨てた
母親と、シェアハウスで再び
一緒に暮らすことになった千鶴と
母の関係を描く物語よ。
そんな状況だと母親に対して
恨みとかありそうだけど。
よく一緒に暮らす気になったな。
千鶴は元夫からDVを受けていたの。
避難先として母親と他に二人の女性が
暮らしているシェアハウスで生活する
ことになったのよ。
女性ばかりのシェアハウスね。
同居人たちはどんな人物なんだろう。
それと母との確執はなくなるのか。
『星を掬う』町田 そのこ(著)中公文庫
あらすじ
力でねじ伏せ何かも奪い取っていく元夫から逃げた千鶴は、女性だけが暮らすシェアハウス「さざめきハイツ」へ向かう。
そこには二十二年前、千鶴を残して姿を消した母・聖子がいた。
同居人の彩子は家事を完璧にこなし、恵真は聖子を「ママ」と呼び慕う。
自らの家族関係を築き上げることができなかった者たちが身を寄せ合う共同生活はうまくいきかけたように見えたのだが。
自分を捨てた母との再会、そして同居生活
小学一年生の夏休み、千鶴は母の聖子と二人で一ヶ月ほどの旅行に出かけます。
行き先も決めず気が向くままに、時には車中泊もしながらの旅は楽しいものでした。
途中で祖母と父が迎えに来て、千鶴は彼らと一緒に家に帰りましたが、母とはそれきり会うことはありませんでした。
数年後に父が亡くなり、母への恨みを吐き続けた祖母も千鶴が高校を卒業した年に亡くなります。
この夏休みのエピソードがラジオで流れ賞金を手にした千鶴。
別れた元夫の弥一はひっそりと暮らす千鶴を見つけ出しては暴力を振るってなけなしのお金を巻き上げていきます。
そんな日々に絶望していた千鶴はラジオ局から、母のことを知る人物から連絡があり、千鶴に会いたいと言っているとの連絡を受けます。
殴られた顔をマスクで隠し、美しい恵真を前に、聖子をママと呼ぶ彼女にひがみや嫉妬など様々な感情が渦巻く千鶴。
聖子は若年性認知症を発症しており進行が速く、どんどん記憶が失われているため、一刻も早く二人に再会してほしい、と恵真は言います。
元夫から避難できるということもあり、突然ですが共に暮らすことに。
同居人は介護福祉士の資格を持つ四十代の彩子さんと美容師として働く恵真。
そして母は、千鶴を見て「あー?ええと」と誰だっけ、という顔をします。
初対面の日、「これから千鶴さんを支えてあげてよ」と恵真が話しかけると母は激しく頭を振り「私が?無理よ!」と叫び…。
まとめ
母のことなんかどうでもいいと態度に出しながらも聖子をママと呼ぶ恵真に嫉妬したり、自分が不幸になったのは母のせいだと叫んでみたり、自分の不幸と母に求める愛情がごちゃまぜになりねじれた感情を吹き出す千鶴。
同居人もそれぞれが家族から見放されたり、男性恐怖症に陥る体験をしたりと、家族を築けなかった傷を心に持っています。
母のせい、と言いながら自分の殻に閉じこもり拗ねているようにも見える千鶴ですが、少しずつ母という人間を知り次第に感情に変化が現れます。
求めあう母と子の愛を再び築きなおす感動の物語です。
<こんな人におすすめ>
元夫のDVから逃れ自分を捨てた母親と再開し共に暮らす話に興味がある
うまく家族を築けなかった者同士が手を取り合って暮らす物語を読んでみたい
町田 そのこのファン
すごいな…。登場人物みんなの
感情のうねりがぶつかって
くるようだ。しかしみんな
辛い目に遭いすぎだぜ…
諦めと絶望の中で生きていた千鶴が
他の人々と触れ合うことで視野を
広げていく姿や母親への思いの
変化に感動の涙が止まらない物語ね。
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