こちらは全国各地に存在する
22のサッカーチームとそのファンたちの
様子を2部リーグ最終節の日を通して
描く物語よ。
サッカーチームっていっぱいあるよな。
順位によっては昇格とか降格とか
あるんだろ?
そうね。その1勝が大きな意味を
持っていたりすることもあるわね。
ファンたちも勝敗に限らずいろんな形で
サッカーを応援しているのよ。
へえ〜。そいつは興味深いな。
勝敗以外にどんな風に
サッカーに興味を持っているんだろう?
『ディス・イズ・ザ・デイ』津村 記久子(著)朝日文庫
あらすじ
本社からやってきた人間からのパワハラに悩む会社員、両親の離婚以来会うことのなかったおばあちゃんとの交流、部活を辞めた先輩に近づきたい後輩の男子高校生。
全国各地で地元に根ざし活躍する22のサッカーチームと22人のファンたちの人生を、2部リーグ今季最終節の「その日」を通して描き出す物語。
パワハラの悩みとサッカー観戦
盛岡の営業所で働く青木荘介は、本社からやってきた西島さんにやたらと難癖をつけられる日々。
本社の部長と家族ぐるみの付き合いがあるとかで、周囲もあまり西島さんに口を出せない中、同じく本社からやってきた荘介と同じ年の柳本さんは軽々と西島さんの絡みにツッコミをいれます。
彼らが本社に戻るまであと一年の我慢。
でも柳本さんは残ってくれないかと考えたりもします。
荘介は小学生の頃から神楽をやっており、イベントに呼ばれると獅子頭をかぶって権現舞をすることも。
姫路のサッカークラブに呼ばれ、盛岡から現地へ向かいます。
舞を終えた後、ルールなどわからないながらも楽しく観戦し、地元遠野でチームが戦うときは見にいくように。
その様子をTVで抜かれ、また西島さんに絡まれてしまいますが、ネットで今の獅子頭にそっくりなものを発見し、思わず購入する荘介。
家にある権現様そっくりに色を塗り、友人に「弟を作ってあげましたよ」と報告。
友人たちに不謹慎だと怒られるかと思いきやおもしろがり、やがて遠野FCを勝利に導くために連れていくことに。
荘介は権現様の弟をかぶってスタジオで応援するようになると、話題にはなったもののいまだ遠野に勝利は訪れず。
一方で権現様がつないだ不思議な縁が生まれます。
まとめ
親子、兄弟、夫婦、現地で会話を交わした初対面の人。
地方にある、その土地の食事や景色を楽しみながら「推し」のチームを応援する人々にはその人の数だけ人生があるということを、その地方の特色やファンの年代性別、環境などの背景から実に丁寧に描かれています。
22のチームと22人のファンたちのお話ですが1チーム1ファンで22冊文の小説になるのでは、と思うほど皆生き生きと、悩んだり泣いたり笑ったりしている姿が印象的です。
人と人がつながる形、好きなものが自分に与えてくれる力に胸があたたかくなる、ずっと読み続けていたいと感じる物語です。
<こんな人におすすめ>
サッカー国内2部リーグのチームの特色やファンたちを描いた物語に興味がある
サッカーを通して観客たち一人一人の人生が鮮やかに浮かび上がる話を読んでみたい
津村 記久子のファン
みなそれぞれの思いを胸に
チームを応援してるんだな!
ルールがわからなくても
年齢にこだわらなくても楽しめる
ってところがすごくいい。
サッカー観戦をしている人たちの
人生の一部分を丁寧かつ鮮やかに
切り取った、読後感がとても良い
物語ね。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。