こちらは父親を亡くした十九歳の
勇介が蔦屋重三郎の営む耕書堂に
奉公することになり、その仕事へ
のめりこんでいく姿を描く物語よ。
蔦屋重三郎!江戸時代の
名出版プロデューサーだな!
そんなところで働けるなんて
すごいじゃないか。
重三郎に「俺の息子だ」と言われ
戸惑う勇助は、嫉妬した先輩の
丁稚たちから数々の嫌がらせを
受けるようになるの。
ありゃ〜。自分で解決しようと
するのか、それとも重三郎に
頼るのか?それから江戸時代の
版元業もどんなものなのか気になるな。
『蔦屋の息子 耕書堂商売日誌』泉 ゆたか (著)PHP文芸文庫
あらすじ
吉原の入り口、五十間道と呼ばれる引手茶屋の並びにある一軒の本屋、耕書堂。
十九歳の勇助は貸本屋をしていた父を亡くし、母と妹を養うためこの店で奉公することに。
店の主人である蔦屋重三郎は勇助を「今日からお前は俺の息子だ」と言う。
戸惑いながらも重三郎のそばでその仕事ぶりを目にしながら侑介は様々な作家たちとその作品が生まれていく様子に夢中になっていく。
戸惑いながらも本作りの世界にのめりこんでいく勇助
時は江戸。
吉原一帯を縄張りに貸本屋として始まった蔦屋は遊女の評判を集めた『一目千本』や『吉原再見』を手がけ大ヒット。
今では作家や画家に依頼し一から本を作って売る版元業も始めています。
貸本屋だった父の背中を見て育った勇助は父の知り合いだったという重三郎の店、蔦屋へ奉公することに。
初めて顔を合わせる重三郎から「俺の息子だ」と言われ戸惑う勇助。
丁稚と同じように働きながらも時折重三郎から仕事の動向を申し付けられたり、商売の日記をつけるように言われた勇助は、先輩の丁稚である正蔵から数々の嫌がらせをされるようになります。
しかし、これを主人に伝えることができずにいました。
ついに仕事でも失態を起こした勇助は重三郎に呼び出され「なぜ皆がお前を虐げるか、わかるか」と問われます。
毎日勇助が書いている日記は取り繕った内容で嘘ばかり。
少しも熱がない、と主人に言われた勇助は負けたくない、という思いをはっきりと自覚します。
また主人に連れられ吉原の大見世に行った勇助は、目の前で行われている狂歌の会のメンバーの中に「朋誠堂」という名の人物がいることを知り、思わず声をかけます。
彼の作品『桃太郎後日噺』が大好きだと伝えると顔色がみるみる変わり『蔦屋!こいつを摘み出せ!」と怒鳴られてしまいます。
まとめ
ストイックなほどに良い本を作ろうとする重三郎は作家をなだめすかし、時には脅し、あの手この手で作家に書かせようとします。
そうした重三郎の、何歩も先を考えたやり方を目にしながら勇助は彼らが作品を生み形にするまでの思い、そして亡き父が物語に求めた思いを知り己もまたその世界にのみこまれていきます。
版元と作家の駆け引きが楽しく、また彼らの良い作品を作りたいという強い情熱に感動する物語です。
<こんな人におすすめ>
江戸の出版プロデューサーである蔦屋重三郎の仕事ぶりに興味がある
蔦屋に奉公することになった青年の物語への思いと人間としての成長を描く物語を読んでみたい
泉 ゆたかのファン
版元も作家もぶっ飛んでるな!
かと思えばきっちり先まで
頭にあって…。おそるべし
蔦屋重三郎!!勇助もびっくりしながら
なんとか食らいついていこうとする
ところが偉いぞ!
本の世界に救われてきたからこそ
そこにかける熱い思いを
持ち続けることができるのよね。
そんな熱に触れた勇助もまた
必死に取り組み成長していく姿にも
感動する物語ね。
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