『黒牢城』米澤 穂信 (著) 角川文庫
こちらは織田信長に叛旗を翻し
籠城する村重が説得に訪れた
官兵衛を地下牢に閉じ込めるの。
そして城内で起こった様々な謎を
解くために官兵衛に意見を求めるのよ。
ほほう。その官兵衛ってのは
知将なわけだな。官兵衛にしても
捕らえられているのに知恵だけ
貸せって言われてもなあ。
そうね。官兵衛ははっきりと
答えを出すのではなく、村重に
ヒントを与えるような形よ。
それを受けて村重は解決して
いくのだけれど…。
籠城中だから織田からの攻撃も
気になるところだよな。
城内で起こる事件と何か関係が
あったりするんだろうか?
あらすじ
武田や上杉を退け、日の出の勢いの織田信長に叛旗を翻す男がいた。
伊丹郷の有岡城城主、荒木摂津守村重は体が大きく、細く落ち窪んだ目を持つ武士。
その村重を説得しようとやってきたのは共に戦ったこともある良将、黒田官兵衛。
村重は官兵衛の言葉を受け入れず、彼を捕らえ地下の土牢へつなぐ。
人々が立て籠もる場内で、いくつもの事件が起こる。
事件の解決と部下たちの士気を気にかけた村重は、その真相を地下牢の官兵衛に問うのだが…。
囚われの知将が解く事件の真相
大和田城を守る安部兄弟が織田に降った。
その知らせに有岡城はざわつきます。
人質として預かっている安部二右衛門の息子、自念は通常は成敗となるところ村重の判断により牢に繋ぐことに。
なぜ殺さぬ、と軍議の場はどよめきます。
牢が完成する明日まで、自念は蔵に閉じ込められさらに見張り数名がつきました。
ところが朝方、自念は死体となって発見されます。
蔵は三方が壁、一方は外の廻り廊下へ通じる障子戸。
自念は仰向けに倒れ、胸には矢で刺されたと思われる傷が。
しかし辺りには弓も矢も落ちてはいません。
家中でも頭抜けた五人の強兵が見張る中、犯人はどのように自念を殺害したのか。
五人にそれぞれ話を聞き、状況を確認する村重ですが、納得のいく答えを導き出すことができません。
そこでふと思い立ち、地下牢の官兵衛に聞いてみようと彼のもとへ向かいます。
日に当たらぬ暮らしで髪も伸び放題。
目は濁っていても頭の働きは衰えていないと判断した村重は、官兵衛に自念の事件を話し、知恵を出せと迫ります。
「それがしには、いと易う覚えまする」と言う官兵衛は逆に村重に問います。
「何をそれほど恐ろしゅう思うておられるのか。官兵衛、それが知りとうござる」と。
その問いに答えず謎の答えも聞かず去ろうとした村重の背に、官兵衛がある歌を投げかけて…。
まとめ
密室殺人事件、首のすげかえ、密使殺し。
織田にそむいた有岡城ではさまざまな事件が起こります。
牢につながれた名将・官兵衛の発言をヒントに真相にたどりつく村重。
体は大きく戦況の判断に長け、部下からの信頼も厚い村重ですが、少しずつ自分を取り囲む状況に変化が起きていることを感じます。
一方で己の命の行方は村重の手ひとつにかかっている官兵衛は、村重からの謎、そして有岡城のこの先を考えることを楽しみ、余裕の表情です。
戦国の世で、男たちは何を得、そして失ったのか。
戦術、謎解き、そして自身の歩んできた道を臨場感あふれる筆致で描く戦国時代ミステリーです。
<こんな人におすすめ>
戦国時代、織田に叛旗を翻した村重の城で起こる密室殺人事件を描いたミステリーに興味がある
地下牢につないだ知将・黒田官兵衛に真相を問う村重の、武将としての揺らぎを捉えた物語を読んでみたい
米澤 穂信のファン
ひょええ〜〜 ひりつくような
緊張感漂う心理合戦だな!
まるで映画『羊たちの沈黙』みたいだ。
戦国武将の知恵と心理を
フル活用した戦い、外部のみ
ならず内部の状況掌握と対処の
見極め。時代劇の醍醐味と
ミステリーが融合した傑作ね。
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