こちらは物に宿るイメージを
捉える能力を持つ散多が
ある一枚のタイルから
様々な方向に展開していく
物語よ。
へえ。物に宿るイメージか。
どんなものが見えるんだ?
ある建物に使われていた
タイルに触れた時に
事故で亡くなった両親の
若い頃の姿が見えたの。
ええっ!?そうなのか。
じゃあそのタイルは両親と
何らかの関わりがあったって
ことか?気になるぜ。
『スキマワラシ』恩田 陸 (著)集英社文庫
あらすじ
古い建物があれば出向き、品物を引き取り販売する古道具屋を営む太郎と散多の兄弟。
弟の散多は物に触れると、そこに宿るイメージを見るという能力を持つ。
そんな彼はある一枚の古いタイルからこれまでにない強烈なイメージを受け、そこに幼い頃亡くした両親の姿を見る。
タイルと両親の関わり、そして廃ビルに現れる謎の少女という二つの出来事が交わるとき、新たな扉が開く。
タイルに宿った両親の思いとは
幼い頃両親を事故で亡くした散多は、八つ上の兄、太郎とともに暮らしています。
以前は東京で働いていましたが、その仕事を辞めて、兄の古道具屋を手伝っています。
散多が物に触れるとそこにある「思い」が見えるという能力を持っており、それはいつ感じるのかも予測がつかず、感じ方も強かったり弱かったりと様々です。
ある日、仕事の帰りに太郎と立ち寄った喫茶店でコーヒーテーブルに敷きつめられたタイルに目がいく散多。
ただならぬ空気を放つ「ソレ」に脂汗を浮かべる散多に、その能力を知る太郎はやめとけ、と目で促します。
しかしどうにも好奇心を抑えきれずタイルに触れた散多はある光景を目にします。
そこは明るく、何かが燃えているようだが熱くなく、遠くのほうに大勢の人がいる…。
ものの数秒ですがこれまでにない感じ方に戸惑った散多はマスターにタイルについてたずねます。
廃業したホテルのものをリサイクルして使っていて、近所の理髪店にもあると言います。
二人は早速理髪店に向かい、散多が触れるとまた懐かしいような不思議な景色が現れ、その先には若い男女が驚いた表情で固まっているのが見えます。
それは若い頃の両親だったのです。
阿久津川ホテルという場所で使われたタイルと両親はどんなつながりがあったのか。
そんな折、仕事関係でつながりのある松川さんから、解体の現場で白い服を着ている女の子を見た、と聞いた散多は都市伝説の「スキマワラシ」を思い出し…。
まとめ
古いタイルと亡くなった両親の関係、解体現場に出没してはいつの間にか姿を消す少女、「スキマワラシ」。
モノの思いを感じる散多は、その謎を探るべく両親の足跡をたどり、そしてスキマワラシの話を耳にします。
その時代を生きてきた人たちが建物へ向ける思いがスキマワラシという姿を借りて具現化したのかも。
そんな風に感じるファンタジーでミステリーな物語です。
<こんな人におすすめ>
モノに触れるとそこに宿るものを見たり感じたりできる青年の話に興味がある
廃墟ビルに現れる少女の都市伝説にまつわる話を読んでみたい
恩田 陸のファン
人の思いが具現化されて
スキマワラシになるのか。
なんだか切ないような
あったかいような
なんとも言えない感覚になる
ファンタジーだな。
失われていく物に対する
郷愁の感覚を刺激される
物語なのかもしれないわね。
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