こちらは看板猫『しっぽ』がいる
土鍋ごはんを提供する食堂の
物語よ。ここにはいろんな思いを
抱えたお客がやってくるの。
『しっぽ』かあ。シンプルだけど
思わずにっこりしちゃうような
名前だな。土鍋ごはんって鍋物を
出すってことか?
鍋といっても鍋料理とは限らず
シチューやフレンチトーストも
提供してくれるのよ。それが
お客の思い出の料理だったりするのよ。
へえっ!土鍋でそんな料理ができるんだ!
あったかい湯気と香りに包まれた
思い出の料理… なんかそれだけで泣けそう( ; ; )
『しっぽ食堂の土鍋ごはん 明日の歌とふるさとポタージュ』
高橋 由太 (著)ポプラ文庫
あらすじ
二十二歳の悠木紬は売れないシンガーソングライター。
社長と二人の小さな芸能事務所に所属しているが唯一の仕事もなくなってしまい途方に暮れる。
散歩の途中で出会った「しっぽ食堂」には看板猫のしっぽとぶっきらぼうな主人がいて、あたたかな土鍋料理を提供してくれた。
疲れた心を癒す、美味しい料理にこわばった心がほぐれていく。
看板猫の「しっぽ」と土鍋ごはん
Youtubeに歌っている動画をあげてはいるものの、再生数は2桁、コメントは厳しいものばかり。
さらに唯一の仕事がなくなったとの連絡を受け、「アルバイトをしないと…」とつぶやきつつ気持ちを切り替えるために散歩に出た紬は、可愛らしい猫の看板がある「しっぽ食堂」を見つけ、足を踏み入れます。
中は古民家風で、壁一面に陶器が並んでいます。
そこへ現れたパステル調の三毛猫の可愛いらしさに夢中になっていると「食事ですか」とぶっきらぼうな声が。
優しげな雰囲気の店内のイメージとは少々異なる、がっしり系の二枚目。
ただし愛想がありません。
席を案内され棚を眺めていると、床に置かれた土鍋に看板猫のしっぽが入り丸まっている「ねこ鍋」状態に。
しばらくたって紬の前に運ばれてきた一人前用の土鍋からは何とバターの香りが漂います。
注文していないのに何故、何が運ばれてきたのか?
怪しむ紬が目にした鍋の中身は何と「長ねぎのポタージュスープ」でした。
喉にいいから、と実家の母が紬のために作ってくれたものと同じ味。
夢を応援してくれる母、紬の歌が好きだと言ってくれた亡き父を思い、涙が出そうになるのをこらえ、口に運びます。
美味しいご飯で救われた紬ですが財布を忘れたことに気付き…。
まとめ
自分の歌で元気になってほしい、と歌い続ける溌剌とした紬の姿、無愛想だけれども優しい店主、店主のかわりに愛嬌をふりまく看板猫、しっぽ。
それぞれが補い合い、響き合って店の中には暖かな雰囲気が醸し出されます。
和風の鍋料理に限らず、洋風料理からデザートまでもこなす土鍋の広範囲な能力に驚きつつ美味しい料理と可愛い猫に癒される物語です。
<こんな人におすすめ>
看板猫のいる店でおいしい土鍋料理を味わえる話に興味がある
傷ついた心をやさしく癒してくれる美味しい料理とあたたかなキャラクターが登場する話を読みたい
高橋 由太のファン
猫鍋、あったか鍋料理…。
これを嫌いなヤツが
世の中にいるわけないよなあ。
モチーフだけでもうほっこり
するやつ。
おいしい料理もさることながら
登場人物たちの軽快なやりとりにも
思わず微笑んでしまう
ハートフルで温かな物語ね。
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