こちらは『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』の
続編よ。近松半二の作品に魅せられた
若旦那や半二の弟子たちの姿が
描かれているの。
前作は人形浄瑠璃の脚本を描く姿に
魅せられたよなあ。あんなすごい
作品を描く人間の弟子とかって
プレッシャー感じそうだなあ。
そうね。弟子の徳蔵はなかなか
作品を生み出せずにいるわ。
一方で半二の娘のおきみは
浄瑠璃の芝居に対して確かな目を
持っているの。
じゃあおきみの助けを借りて
書けばいいじゃん!
ってそんな簡単には
いかないんだろうなあ。
『結 妹背山婦女庭訓 波模様 』大島 真寿美 (著)文春文庫
あらすじ
明和八年、近松半二が書いた「妹背山婦女丁庭訓」は大盛況だった。
繁盛している酒屋の若旦那の平三郎は芝居好きが高じて義太夫節にも絵にも才を見出す。
半二の弟子の徳蔵は家業があり、なかなか目が出ないものの浄瑠璃作家への道を諦められずにいる。
半二の娘、おきみは幼い頃から浄瑠璃を見て育ってきたため、徳蔵は彼女の意見を頼りにしていた。
そんな折、徳蔵に歌舞伎の脚本を書いてみないか、という誘いが入る。
人形浄瑠璃に魅せられた人々の悲喜こもごも
多趣味で器用な平三郎は人形浄瑠璃の「妹背山婦女庭訓」にどはまりし、何遍も見に行きます。
舞台の様子を残そうと絵に描き家族に見せると喜ばれ、浄瑠璃の詞章を覚えようと義太夫節を練習し、楽しむ日々。
気がつけば芝居道楽の強者として名を馳せるようになっていました。
知り合いとなった半二の弟子の徳蔵や、半二の娘のおきみとも芝居の話で盛り上がったりもします。
扇にちょっとした絵を描いたものが人々の評判になり思いがけず平三郎は本を出すことになります。
座敷に呼ばれ義太夫を披露することもある平三郎は、自分はどっちつかずの人間だなあと感じています。
一方徳蔵は弟子入りしたものの何年も書けず、おきみが口にする言葉や感性にただならぬものを感じています。
歌舞伎の話を描いてみないかと誘われた徳蔵は、いずれ浄瑠璃をやると胸に秘めつつ引き受けます。
半二が亡くなり、制作途中の作品を仕上げなければならなくなったとき、平三郎はおきみに書いてもらうことを思いつきます。
作品は見事に仕上がり成功しますが、おきみは体調を崩した母とともに大阪から離れることに…。
まとめ
芝居の脚本を書く者、絵を書く者、唄う者、見守る者。
多くの者たちが創作の世界に関わりその地獄を味わいます。
同時に生み出す作業や新たな世界を発見することに大きな喜びも感じています。
人や物事がつながり巻き込まれ、物語が生まれていく。
人間の営みに、今を生きていることに「そら、ええな」と言いたくなる感動の物語です。
<こんな人におすすめ>
人形浄瑠璃の世界に魅せられた人々の人間模様と悲喜こもごもを描いた時代小説を読んでみたい
前作『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』を読んだ
大島 真寿美のファン
胸がほかほかとあったかく
なるんだよなあ。なんだか
生きてるっていいなって
思えて涙が出るぜ…。
人形浄瑠璃が繋いだ
三人のかけがえのない絆にも
感動する物語ね。
前作『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』のイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます。
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