
こちらは高校教師である
お父さんが本にまつわる
謎を解くシリーズ第三弾よ。
今回は落語にまつわる謎が
登場するの。

ほほう!今回は落語か。
いったいどんな謎が登場
するんだ?

ある夫人の亡くなった旦那さんが
好きだった落語家のCDを作家が
貸してくれたのだけれど
夫人は変わらず浮かない表情
だったようなの。

聞きたい演目じゃなかったのか?
それとも希望した日時の公演を
聞きたかったとか。

どちらも違ったようね。
中野のお父さんは娘の美希から
この話を聞いただけで真実の
尻尾をつかんだようよ。
『中野のお父さんの快刀乱麻』北村 薫 (著) 文春文庫
あらすじ
文宝出版に勤める中堅編集者の田川美希は、コロナの流行で今までと異なる仕事のスタイルに戸惑いながらも日々の仕事に励む。
文芸編集部の編集長が変わったり嬉しい人物が異動してきたりと部内の変化もある中、新編集長と作家と話をしていたところ、落語の話題に。
編集長は落語好きの作家にCDを貸してくれないか、と頼みます。
志ん朝の落語から聞きたかった音とは
新たに編集長となった百合原ゆかりと、大御所の作家である村山先生に原稿のお礼がてらに新作長編をお願いしようということになった、担当の美希。
無類の落語好きである村山先生との会話が進む中、ゆかりは落語好きだった義父が亡くなり、義母が元気をなくしていることを話します。
生前義父が出かけて危機に行っていた落語家、志ん朝のCDなどはあまりなく、そのかわり著書が何冊もあり義母はそれを読んでいるのだとか。
それを聞いた村山先生は、自分が持っている志ん朝のCDをゆかりの義母に貸してくれることに。
恐縮しつつも、これで義母も喜んでくれるのではと思っていたゆかりですが、義母は相変わらず浮かない表情。
演目も求められていたもので合っているはずなのに…。
話を聞いて気になった美希は、リモートで中野の実家の父に事情を伝えます。
すると父はこくんと頷き、「なるほど、なるほど」とわかったような顔つきをしています。
お父さんが導き出した真相とは。
まとめ
昔のレコードに入っている観客の声、志ん朝のドイツに絡んだエピソード、落語界に激震が起こった出来事。
本に負けず劣らず落語の世界にも精進するお父さんは、志ん朝や様々な落語家たちの語りの技や特色、得意とするテーマなどを披露。
そしてゆかり編集長の義母が志ん朝のCDで聞きたかった「音」はなんだったかを推理していきます。
紙の上の言葉に残るもの、変化していくことも不思議で楽しく、落語という語る世界の言葉の多彩さにも大きな驚きと味わいがあることを教えてくれます。
読むたびに心が豊かになるように感じるシリーズ第四弾です。
<こんな人におすすめ>
語る者により解釈や味わいの変わる落語の世界にまつわる謎解きの話に興味がある
『中野のお父さん』シリーズのファン
北村 薫のファン


この、どんどん広がっていく感じが
いいんだよなあ。落語の世界も
「言葉」を大切にするって部分は
同じなんだな。

言葉の海に泳ぎだしたような
気持ちになるわね。そして
言葉や音の受け止め方にも
それぞれあるということが
胸に深く染み渡る物語ね。
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