
こちらは著作権法の演奏権の侵害を
しているという証拠を掴むために
大手の音楽教室へ生徒として潜入し
スパイ活動をする青年を描く物語よ。

音楽教室での演奏における著作権の
侵害か。ニュースにもなっていたよな。
そのスパイってのはどんな男なんだ?

彼は訴える側、つまり全日本音楽著作権連盟で
働いているの。過去にチェロをやっていたことで
上司に言われ公務員と偽ってチェロ教室に
通い始めるの。でも不眠の症状や過去の出来事など
自身の中にもいろんなものを抱えているの。

うーん。音楽が何らかの効果を
もたらすといいけど。といっても
スパイという立場は音楽教室の
人たちにとっては裏切り行為だよなあ…。
『ラブカは静かに弓を持つ』安壇 美緒 (著)集英社文庫
あらすじ
少年時代に起こったある出来事をきっかけに、悪夢と不眠に悩まされている橘樹。
全日本音楽著作権連盟で働く橘は上司である塩坪から呼び出され、著作権法の演奏権の侵害をしている証拠を掴むため、音楽教室に通い潜入捜査を行うよう命じられる。
橘は自身を公務員であると偽り、チェロ講師・浅葉桜太郎のもとに通い始める。
音楽が深い闇から光の世界へと導いていく
塩坪に資料室へと呼び出され、橘にチェロ歴があることから全国に展開しているミカサ音楽教室への潜入捜査を命じられます。
ミカサは全著連へ著作権使用料の支払い義務がないことを東京地裁へ訴える構えとのこと。
そこで橘にレッスンがどのように行われているかを調査してもらい、証拠として提出する予定だと塩坪は言います。
そしてその期間は2年。
ミカサ音楽教室二子玉川店で浅葉桜太郎からチェロを教わることになった橘ですが…。
過去の事件がもとで慢性的な不眠を抱える橘はクリニックにも通っています。
事件以来、再びチェロに触れたことで喜びによる興奮と、気を抜いたら吐いてしまいそうな感覚に同時に襲われ不眠の症状は悪化。
車内の派閥争いや同僚からの絡み、上手く響かない自分のチェロの音色。
様々なストレスに不眠の疲労が重なり、橘はレッスン中に倒れてしまいます。
休ませてもらっている間、浅葉は橘のために『雨の日の迷路』という曲を奏で、その音色は橘に深く沁み込んでいき、意識が遠のくのと同時に12年前、チェロ教室の帰りに誘拐されかけたことを改めて思い出すのです。
やがて浅葉に教わっているメンバーで開催されている食事会に呼ばれ、その距離感やさりげない気遣いをしてくれる彼らと共に過ごすひと時を思いがけず楽しんでいる自分に気づく橘。
会合に定期的に参加するようになり、チェロの腕前も向上し、睡眠の質も少しずつ改善していきます。
自分はスパイであり、いずれここを離れる身であると意識するようにしていた橘。
しかし全著連職員がミカサ音楽教室へ生徒として入会し、潜入捜査をしていたことがニュースになり…。
まとめ
過去の事件以来、周囲から一歩距離を置くようにひっそりと生きてきた橘。
音楽を愛し、頑固な部分もある人間味溢れる浅葉と彼が出す音に導かれるように少しずつ浮上していきます。
音楽が忌むべき記憶とつながっていたとしても、一方でまた傷ついた心を癒し人と人とを繋げる役割も持つのです。
哀しく孤独なスパイ、橘がどうか音楽の力で救われてほしいと願わずにはいられない物語です。


苦しい闇を作ったのも音楽なら
暗い海の底から一筋の光を
照らしてくれったのも音楽なんだな。
皮肉なことだけどスパイ活動を
したことでそれに気付けたんだよな。

チェロ講師の浅葉と練習を重ねて
響きを広げていく二人のチェロの
音が胸に深く染み込んでいく物語ね。
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