
こちらは軽井沢にある老舗ホテルの
スタッフやそこに訪れるお客たちを
描く『銀河ホテルの居候』シリーズ
第二弾よ。亡くなった妻が生前に
自分宛に書いた手紙を受け取りに
ホテルへと訪れる男性が登場するの。

奥さんが…。ホテルには
確か手紙室ってのが
あるんだよな。そこで
手紙を預かっているのか?

そうなの。手紙室はホテルで人気の
ワークショップ。手紙は投函することも
持ち帰ることも、ホテルで預かることも
できるのよ。

亡くなった奥さんは一体何を
伝えたかったんだろう?
気になるぜ。
『銀河ホテルの居候 光り続ける灯台のように』
ほしお さなえ (著) 集英社文庫
あらすじ
軽井沢の老舗ホテルで人気の「手紙室」は、たくさん並んだインクの中から気に入った色を選び、誰に宛てても良い手紙を書くワークショップ。
一昨年前に妻を無くした滝田は、妻が遺した手紙室の預かり証を発見し、思い出のある銀河ホテルへ向かう。
妻が自分へ向けた手紙を読み、滝田はインクの色を選びペンを手に取る。
顔を上げればそこに妻の笑顔が見える気がした。
妻からの預かり証を手に思い出のホテルへ一人向かう
大学教授を務め、大学を去った後学会の仕事や研究成果をまとめる計画もあり、家で執筆する生活を送っていた滝田。
その間、妻の幸子の具合が悪くなり、認知症の診断を受けます。
ヘルパーや訪問看護を利用しながら在宅介護を続けましたが、一昨年前に幸子は亡くなります。
しばらく何も手につかなかったものの、後輩や編集者から励まされ執筆活動を再開することに。
しかし思うように筆は進みません。
何とか執筆を終えた滝田は、幸子との思い出深い銀河ホテルへとやってきます。
最後にこのホテルに泊まったのは8年前。
ホテルの前でたまたま居合わせた客に撮ってもらったふたりの写真を気に入った幸子は「これを遺影にしようかな」と言います。
笑いながら気が早いと答えた滝田でしたが、本当に遺影としてこの写真を使う日が来るとは思ってもみなかったのです。
幸子が亡くなった時、葬儀屋から遺影にする写真を用意するよう言われ、この一枚をおさめた写真たての裏側のふたを開けた滝田は、そこに封筒が入っていることに気づきます。
手紙の預かり証が入った封筒を手に、銀河ホテルへとやってきた滝田はワークショップも申し込み、幸子が自分に宛てた手紙を読んだ後、自らインクを選びペンを手に取ります。
幸子が前の前にいるかのように感じながらペンを走らせて…。
まとめ
大切な妻を亡くし、自分の一部分が欠けてしまったような感覚で過ごす日々。
仕事一筋で何もしてやれなかった自分に妻はどう思っていたのか。
後悔と悲しみを抱えて訪れた思い出の銀河ホテルは、幸子が元気だった頃に宿泊した頃と変わらぬたたずまい。
このホテルで交わした会話や感じたことを思い出しながら妻が自分に遺した手紙を読む滝田は、忘れていた妻のミステリ好きでお茶目なところ、好きだった花が頭に浮かぶのです。
限りある人生を寄り添い過ごしていける記憶を呼び起こしてくれる。
銀河ホテルは利用者にとってそうした特別な場所なのかもしれません。
<こんな人におすすめ>
手紙を書くワークショップで見えなくなった自分を見つける物語を読んでみたい
前作『銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に』を読んだ
ほしお さなえのファン


申し訳ない気持ちばかりじゃない。
大切な愛しい様々なことを
思い出すことができて本当に
良かったなあ(இдஇ )

静かな空間で色やペン、
紙に向き合ったこと
そして二人が訪れた時から
変わらないこのホテルだからこそ
記憶を呼び起こすことができたのかも
しれないわね。
前作『銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に』のイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます。
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