
こちらは軽井沢にある老舗ホテルの
中にある「手紙室」に訪れる
お客たちが手紙を書くことを通して
自分の人生に向き合うお話よ。

「手紙室」かあ。お客が手紙を書くために
あるのか?いったいどんな場所なんだ。

ホテルのワークショップの一つとして
案内しているわ。1000色ものインクの
中から自分で色を選んで手紙を書くの。
亡くなった方や将来の自分に向けた
ものでも良くて希望すればホテルで
手紙を預かってくれるのよ。

へえ〜。そんなにたくさんの色が
あるのか!誰に向けて何を
どんな色で書くのか迷うのもまた
楽しそうだな。
『銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に』
ほしお さなえ (著) 集英社文庫
あらすじ
南軽井沢にある銀河ホテルはイギリス風な瀟洒な洋館で調度品にも凝っていて人気があり、リピーターも多い。
そんなホテルの一角には「手紙室」があり、ここで行われるワークショップに参加すると、不思議と自分の本当の気持ちが見えてくる。
様々な思いを胸にホテルへ訪れた客たちが手紙に書くことを通して自分の人生と向き合っていく。
楽しみにしていたホテルへの宿泊だが…
娘の涼香に誘われ、涼香の家族とともに銀河ホテルへとやってきたわたし。
義父と夫を介護の後に看取り、その後一人暮らしの期間を経て介護付施設に入所中での誘いで、思い出のある美しいホテルにまた行けることが嬉しく、喜んで参加を決めましたが思いがけず疲れやすい自分の体を実感してしまい、明日のホテル周辺のトレッキングをキャンセルしようかと悩みます。
しかし楽しみにしている涼香たちに迷惑をかけたくない…。
そんな時ホテル内の手紙室でのワークショップが目に留まり、こちらの方に一人で参加することに。
手紙室の室長である苅部は彫りの深い整った顔立ちの40代くらいの男性。
部屋にずらりと並ぶ1000色のインクの中から色を選ぶ手伝いをしてくれるといいます。
多くの色や形をした瓶に圧倒されているわたしに「少し使ってみませんか」と12本の小瓶のセットを並べます。
美しい発色に夢中になりながら、頭の中では昔は自分はよく絵を描いていたことを思い浮かべます。
そして選んだインクでわたしが描こうと思いついた手紙とは。
まとめ
介護、看取りからの施設での暮らし。
日々老いを感じ、周囲に気を使ったり体力の衰えを嘆いてみたりと知らぬうちに縮こまった生き方をしていたようです。
多くのインクは悩みを抱えた人々の気持ちを引き寄せ自分の思いに寄り添う色で、これまでとこれからの自分を描く力となってくれるのです。
心地良い距離感で見守ってくれているような安堵感と明日への一歩を踏み出す力をもたらしてくれる、心に沁みいる物語です。
<こんな人におすすめ>
軽井沢の瀟洒なホテルがもてなすサービスとお客への思いを描いた話に興味がある
手紙を書くことで自分自身とこれからの人生に向き合う姿を描いた話を読んでみたい
ほしお さなえのファン


ペンを持って手紙を書く時間は
自分の内面と対話している
時間でもあるのかもしれないな。

お客に寄り添うスタッフの心遣いと
自分の気持ちに静かに向き合うことが
できる、かけがえのない時間を
過ごすことができる素敵なホテルね。
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