
こちらはある飛行機が乱気流に
巻き込まれた後、到着地とは
異なる場所へ着陸するの。この
飛行機に乗っていた人たちが
異常事態に見舞われるお話よ。

乱気流か。機体が大きく動くと
ひやっとするよな。
けが人や具合が悪くなった人は
いなかったのか?

幸い乗客は皆無事だったわ。
でもその乗客たちのもとへ
様々な機関が訪れるの。

乗客全体に何かが起こったってこと?
でもけが人はいないんだよな…?
『異常【アノマリー】』エルヴェ・ル・テリエ (著)
加藤 かおり (翻訳) ハヤカワepi文庫
あらすじ
2021年3月21日、パリ発ニューヨーク行きエールフランス006便は異常な乱気流に巻き込まれた後、管制塔の指示により目的地とは異なる場所へと着陸する。
売れない作家、軍人の妻、殺し屋、癌を告知された男。
彼らがこの飛行機に乗ったために巡り合うことになった異常事態とは。
同じ飛行機に乗り合わせった彼らに何が起こったのか
二十歳で殺し屋としてデビューしたブレイクは努力を惜しまずスキルを磨き、証拠を残さず完璧な仕事で依頼人の要望を果たしています。
旅先で順調に仕事を終えたブレイクは、帰路の飛行機のことを考え中。
四十三歳のミゼルは本業である文学作品が売れず、翻訳の仕事で糧を得ています。
翻訳した作品が評価されて賞をとり、授賞式に参加した後に乗った飛行機がエアポケットになんども落ちるという体験をします。
帰宅後、猛烈な勢いで「異常」というタイトルの作品を書き上げると、バルコニーをまたぎ落下します。
映像編集者のリュシーは交際相手であるアンドレとの間に限界を感じていました。
そしいて言葉を重ねて彼が送ってくるメールにも苛立ちを隠せません。
鳴り響く電話の音に血をのぼらせながら出たリュシーの耳に届いたのは女性の声で、国家警察に人間であると名乗ります。
そして、召喚状を持っていて説明をしたいので玄関のドアを開けてほしい、と言うのです。
エイプリルは休暇で帰ってきた軍人である夫の乱暴な言葉遣いと行動に悩んでいましたが、夫は注意をしても全く聞き入れません。
娘のソフィアと夫が二人で家にいる時にFBI捜査官がやってきて、ママと兄のリアムのところへ案内してくれる、と言いました。
また、弁護士としてバリバリと働くジョアンナは仕事の忙しさとプライベートの調整でめまぐるしい日々を送っていました。
そんな中、彼女のオフィスにFBIの捜査官がやってきて…。
まとめ
殺し屋や作家、子連れの母親。
様々な人生を乗せた飛行機はニューヨークを目指して飛行中にひどい乱気流に巻き込まれます。
誰ひとり怪我することもなく、目的地とは異なる場所ではありますが無事に着陸した彼らを待ち受ける驚愕的な事実とは。
知った時点で終わりではなくその先に続く展開に、人間の業や生き方の違いといった多様な面白さが無限に広がっていき、強く印象に残る物語です。
<こんな人におすすめ>
ある飛行機に乗り合わせた人々の数奇な運命を描いた話に興味がある
生きることや世の中のことといった価値観が揺さぶられる話を読んでみたい
エルヴェ・ル・テリエのファン


SFでもあるけれども死生観とか
哲学とかものすごいいろんなものが
つまった濃厚な物語だな。

多くの登場人物が現れる中
誰一人として同じ生き方はない。
それぞれの生き方が異常事態の中で
くっきりと浮かび上がるお話ね。
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