
こちらは太宰治の『走れメロス』を
モチーフにしたミステリーよ。
メロスは走っている途中で
様々な事件に巻き込まれその謎を
解いていくの。

それはまた斬新な。
文体なんかはオリジナル作品を
意識したものになってたり
するのか?

そうね。意識しつつも軽妙な
ウイットを効かせた文体で
軽快に読み進められるわ。
単純なメロスが推理に挑む
様子も見どころのひとつよ。

へええ。メロスがどんな風に
事件を推理していくのか
楽しみだぜ。
『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』
五条 紀夫 (著) 角川文庫
あらすじ
メロスは推理したー。
自分の身代わりとなり捕らわれてしまった親友セリヌンティウスを救い出すために、三日以内に故郷を往復しなければならないことになったメロス。
しかし故郷では妹の婚礼前夜に新郎の父親が何者かに殺された。
しかも現場は密室状態。
一刻も早く首都へ戻るためにメロスはこの事件の解決に乗り出す。
その後も数々の事件に出会うメロスが首都に戻ったときに、衝撃の事実が明らかに。
妹の結婚式のために戻った故郷で義父が殺される事件が発生
妹の婚礼のために故郷へたどり着いたメロス。
しかし、新郎ムコスの父・ギフスが心臓を一突きにされた死体となって発見されます。
しかもその現場はメロスと妹以外は入ることのできない、内側から閂のかかった羊小屋。
一刻も早く友の待つシラクスへ戻りたいメロスは事件解決に挑みます。
自身の内なる声を聞き、力に訴えかけようとする己をなだめながら村人たちのアリバイを聞き、状況を検分していきます。
昨夜のギフスの様子をムコスにたずねていたメロスは、彼がムコス宛に届いた手紙、つまり粘土板を床に叩きつけて砕いたことを知ります。
村人たちをかき集め、砕けた粘土板を修復した結果、そこに書かれていたのは「誰にも内緒で我が家の羊小屋に来て下さい」という、メロスの妹からムコスに宛てたメッセージでした。
村人たちの目線は、お前がギフスを殺したのか、と妹に注がれたのですが…。
まとめ
名作「走れメロス」をベースに様々な事件に巻き込まれ解決しながら友の待つ街へ向かって走るミステリー。
妹の義父の密室殺人事件や道の途中で遭遇した山賊の死体、川での溺死体に対して、メロス自身は単純明快ですぐ力で解決しようとするのですが、危機的状況に対応したのか『奴』なる存在が現れあらゆる可能性を話し合い検証します。
数々の事件を解決し、ようやく友の待つ地へ戻ったメロスにさらなる大きな謎が待ち受けます。
名作の文体をここまで楽しくパロディ化させ、リズムを損なわず高度なユーモアを感じさせながら、骨太なミステリーに仕上げている、剛柔のバランスが秀逸な物語です。
<こんな人におすすめ>
『走れメロス』のパロディでミステリーに仕上げた話に興味がある
走る先々で事件に巻き込まれ推理を働かせるメロスを描いたユーモアのある話を読んでみたい
五条 紀夫のファン


面白い!メロスのアホっぽさが
また場の空気をかきまわして
何とも言えぬ雰囲気にニヤニヤ
してしまうな。

物語の設定を崩さない中での
謎やその推理も見どころの
ミステリーね。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。