
こちらは江戸の大店の次男坊である
仙之助が使用人と暮らす屋敷に
持ち込まれる曰く付きの品と
その品に絡んだ謎を解くお話よ。

うおお 呪われたなんとかって
やつ??そんなもの受け取ったら
怖い目に遭いそうだぞ。

女中のお凛は注意しているようだけど
仙之助は怪異に目がないの。
品物にまつわる謎を解くという
名目で受け取ってしまうのよ。

女中も苦労しているわけだな。
それにしてもその品物たちは
本当に呪われているのかな?
『深川あやかし屋敷奇譚』笹目いく子 (著) アルファポリス文庫
あらすじ
浅草田町にある高級料理茶屋「柳亭」の次男坊、仙之助は一見優男風の美男子だが、怪異に目がない変わり者。
五十半ばを過ぎた富蔵と、三十路近くのお江津と十五のお凛の二人の女中と暮らす屋敷には千之助が集めたいいわく因縁付きのがらくたであふれている。
あきれるお凛が目を三角にして止めても、今日もあやしげな謎の品が千之助のもとに持ち込まれる。
呪われた振袖の謎に変わり者の若旦那が挑む
古着屋の手代、藤吉が持ってきたのは「呪われた振袖」。
客引きのために飾っておいたところ振袖から火が出たのだとか。
幸い気づいた藤吉がすぐに水をかけ火は消えたものの、再び火が出たのです。
それも店のお嬢さんで十九になるお菊が羽織ってみたときに本人が「熱い」と騒ぎ、みるみる間に炎が立ち上がったのです。
目をきらきらと輝かせながら話を聞いていた千之助は「まるで、梅野の振袖のようなお話ですねえ」と唸ります。
質屋の娘、梅野が寺の小姓に恋をしましたがかなわぬ思いを抱え憔悴し、命を落としてしまいます。
梅野の振袖は数々の娘の手にわたりますが彼女たちは次々と亡くなってしまうのです。
寺男たちが焼いて供養しようとすると、振袖は火をつけたまま舞い上がり江戸の大半を焼いた「振袖火事」になったと言います。
下手に処分をして火事を招いても大事だと判じ、天眼通と呼ばれ祟りや憑きものを見分けると噂の仙之助ならば何とかしてくれるのではと考え、藤吉は振袖を持参したのでした。
祟りも呪いも避けて通る性質を見込まれて雇われたお凛は、仙之助からこの振袖を羽織ってほしいとたのまれます。
火が出れば本物の「呪いの振袖」である証明になると仙之助は主張します。
高級練り切りにつられておそるおそるお凛が羽織ってみたところ、火は出ず何も変わったことは起こりません。
では店で振袖から火が出たのは何故なのか。
仙之助がたどりついた真実とは。
まとめ
幽霊や呪いなど、いわくつきのものに目がない仙之助がこうしたものに影響を受けない、しっかり者で力もちの女中であるお凛とともに怪異の謎に挑みます。
祟りや呪いの裏に潜む生きた人間の悪意を、仙之助が鋭い推理で暴き真実を見つけ出します。
お凛との軽快な会話と人間の奥底にある闇とのコントラストが鮮やかな、最後までワクワクとゾワゾワが止まらない物語です。
<こんな人におすすめ>
曰く付きの品に目がない変わり者の若旦那を描いた物語に興味がある
あやかしの仕業と見せかけた生きた人間の闇を暴く話を読んでみたい
笹目いく子のファン


仙之助とお凛の会話が最高!
テンポよく進むやりとりが
心地いいな。

怪異を求める仙之助の心の内も
気になるところよね。
生きた人間の悪意と怪異との
コントラストが鮮やかに浮かび上がる
物語ね。
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