
こちらは暴力が趣味だという
依子が暴力団の娘である尚子の
ボディガードとなるハードボイルドな
物語よ。

女の人で暴力が趣味??
ハードボイルドな物語ってことは
激し目な闘いが繰り広げられるのか。

暴力団の内部ではミスをすれば
身体の一部分を切り取られるという
残虐な行為がまかりとおっているの。
依子はやがてそんな彼らとも
闘うことになるわ。

闘うことになるのにも何か
理由がありそうだな。
それと依子の強さってのが
どんなものなのかも気になるぜ。
『ババヤガの夜』王谷 晶 (著) 河出文庫
あらすじ
暴力が趣味の新道依子は、その腕を買われ暴力団・内樹會の会長の一人娘である尚子の運転手兼ボディガードとして雇われる。
人形のように美しく気位の高い尚子だが、彼女には逃れられない運命が重くのしかかっていることを依子は知ることになり…。
暴力の満ちた世界で顔を合わせた二人
ヤクザとのケンカで暴力団の会長・内樹源造の邸宅へと連れて来られた依子は、数人の男たちに囲まれてもなお隙を見ては反撃し、彼らの股間に鉄板入りの安全靴で蹴りを入れたり、投げ飛ばして叩きつけたりします。
そんな依子ですが、言うことを聞けないならば犬を殺す、とドーベルマンの喉元に刃物をつきつけられた途端、すぐさま屈します。
与えられた仕事は、会長の一人娘である尚子の運転手とボディガード。
会長の妻に似ているという尚子は父親から溺愛されており、女性としての価値を高め、良き妻となるために大学の講義が終わるとお茶やお花など息つく間もないくらいにびっしりと埋まったスケジュールをこなしています。
気位が高く、依子に冷たく用件を命じる尚子ですが、彼女の母親は10年前に組の若い衆と逃げており今も行方不明であることを、組の人間から聞いた依子。
源造は執念深く残忍な性質を持っており、今も失踪した二人を捜し続けているということも。
そして仕事などで失態を犯した者や尚子に対しておかしな行動をとろうとした者は身体の一部分を切り落とされ会長のもとへと届けられるのですが、この拷問を好んで行う宇田川という男が尚子の婚約者であることを聞き…。
まとめ
大柄で鍛え抜かれた筋肉を持ち、暴力が趣味である依子とヤクザの会長の一人娘で大事に育てられてきた尚子。
育った環境も生き方もまるで異なる二人が出会い、衝突し、手を取り合っていきます。
日常的に暴力が繰り広げられる世界の中で、その力に守られ自分のために傷つけられたりする人々とその場面を見続けてきた尚子の中にも、暗く深い絶望が潜んでいました。
そんな尚子の闇を察知し、彼女の危機を救うべく拳をふるった依子はこの場に残ることができず、尚子とともに逃げ出すことに。
友情とも愛情とも親愛とも異なる、名前がつかない関係の二人が逃げ続けた先に見た世界には胸が震えます。
圧倒的な暴力描写でありながらも、ブレないものを己の中にしっかりと持ち続ける二人の強さに心を打たれる、興奮と感動のなみが同時押し寄せてくる物語です。
<こんな人におすすめ>
バイオレンス溢れるシスターフッドの物語を読んでみたい
生まれも育ちもあまりに異なる二人の女性の逃避行を描いた話に興味がある
王谷 晶のファン


二人の関係性がすごい!
尚子の抱える絶望に対して
理解はできないけどただ寄り添う
依子の無骨な感じがまたいいね。

共通する部分が何もない
全くの対局にあるような二人が
夜の闇を疾走していく。
そんな躍動感あふれる
シスッターフッドな物語ね。
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