はじめに
涼しくなってきて、
ちゅーるがより美味しく感じられるなあ。
食欲の秋が到来ね。
今回は、そんな食欲を刺激する
美味しい料理が登場する小説を
紹介するわ。
美味しいものがたくさん登場する食欲の秋がやってきましたね。
沸き立つ湯気、溢れ出る肉汁、とろけるような食感…。食欲の秋にふさわしく、読んでいるだけでお腹が空いてくるような、美味しい料理が登場する小説10点を、料理とあわせてご紹介します。
読めばたちまち美味しそうな情景が浮かび上がり、本を閉じた途端に何かを食べたくなるようなお話を集めました。うまい料理の陰には、人生の悲喜こもごもが隠れていることを教えてくれる、心も食欲も満たしてくれる物語たちです。
『注文の多い料理小説集』 柚木 麻子 (著), 伊吹 有喜 (著)他計7名 文春文庫
柚木麻子、伊吹有喜、井上荒野、坂井希久子、
中村航、深緑野分、柴田よしきら7人の作家による、
料理をテーマにしたアンソロジーよ。
会員制でカウンターのみの寿司店。ここに訪れるのはカップルばかり。薄暗い店内でおしゃれな雰囲気の中、渦巻く男女の欲望。そこへ現れたのは抱っこ紐で赤ちゃんを抱っこした1人の女性。周囲の目線をものともせず、大きな声で驚くようなオーダーを次から次へと発するのです。
パワフルな彼女はひととおり食事をすませると颯爽と帰っていきます。残されたカップルの女性たちは男に寄りかかろうとしている自分の姿にハッとします。そうして自分の足で歩こうとしていくのでした。
7人の作家さんがそれぞれの切り口で「料理」をテーマに描きます。高級創作寿司からおにぎり、旬の素材を使った家庭料理などいろんな料理が登場します。
どのお話も、登場人物たちの人生を垣間見ることができ、料理とともに味わうことができる、満足度の高い物語です。
「食べる」ことは「生きる」ことと
直結してるよな!
食事の姿から生命の力強さを感じるぜ。
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『ランチのアッコちゃん』 柚木麻子(著) 双葉文庫
仕事もプライベートもうまく行かないOLが、
先輩行きつけのお店でランチをすることによって
変わっていくお話よ。
派遣社員の三智子は、同じ職場の黒川敦子部長、通称「アッコさん」からランチの交換を持ちかけられる。彼女が作ったお弁当をアッコさんが食べ、彼女はアッコさんからお金を受け取って、アッコさんが指定した行きつけの店へランチを食べに行くのだ。
それぞれの店で、アッコさんの会社では見せない部分を聞く三智子。その意外性のある姿に驚くとともに、今の自分はどうだったのかと目を向けるきっかけにもなりました。少しずつ成長していく彼女の姿に元気をもらえる物語です。
どんなシチュエーションで食べるのかも大事だよな。
『ランチ酒』 原田ひ香(著) 祥伝社
夜を徹して対象者を見守る「見守り屋」をしている
女性が、夜勤明けにランチとお酒を楽しむお話よ。
離婚してバツイチ独身の犬森祥子の仕事は「見守り屋」。依頼を受けた対象者のことを一晩寝ずに見守る。唯一の楽しみは、仕事明けのランチとお酒。疲れた心と体に染み込んでいく味わいは、日頃の鬱屈とした気分を払拭してくれるのだ。
事情を抱えた人たちと夜を過ごし、やんわりとした繋がりを感じる祥子。今の自分はどん底にいるようにも思えるけれど、底だから見えることも、感じられることもある。
そして、「美味しい」と感じられることは、まだ自分はやれるのだということなのではないでしょうか。
酒!滴る肉汁にビール!昼から!しかも仕事終わり!
俺なら気分上がりっぱなしだぜ!
でも人生は色々あるんだよなあ。
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『それからはスープのことばかり考えて暮らした』
吉田篤弘(著) 中公文庫
古い映画に出ている女優に恋をした男性が、
美味しいスープづくりに取り組んでいくお話よ。
路面電車が走る町に引っ越してきた青年・オーリィ。銀幕に映る古い映画の女優に恋をしている。お気に入りのサンドイッチ店の店長から「うちで働かないか」と声をかけられ、サンドイッチを作り始める。そして、お店で出すスープを試作してみるが、なかなか思うような味にならず…。
ゆったりとした、セピア色の空気が漂う物語です。のんびりとしていて、サンドイッチが作れそうな繊細な手を持つ主人公の青年、オーリィ。
あまり物事に執着しないタイプのようですが、スープ作りを任されてから、日々スープのことを考え、没頭していきます。
そして彼が巡り合った「これだ」と感じたスープの味とは。そのスープのあたたかさが、胃の中にじんわりとしみ込んでいくような読後感の良い物語です。
人を幸せにする味は、案外近くにあったり
するものだよな。母親にくっついて暮らして
いた頃を思い出すような、あったかい気持ちに
なるな〜。
『Rのつく月には気をつけよう』 石持浅海(著) 祥伝社文庫
飲み会の席で語られるゲストの謎を、美味しいお酒と
つまみをいただきながら解いていくミステリーよ。
大学生時代の仲間3人が、毎月1人のゲストを迎えて行う飲み会。そこで聞くゲストの話には、ちょっとした謎がある。うまい酒と肴とともに、謎を解いていくミステリー。
出てくる料理は
ゲストの恋愛話かと思いきや、そこにはちょっとした謎があって…。お酒を飲んでいるのにキレのある長江の推理が光ります。
そして、お酒とつまみの組み合わせや食べ方が美味しそうであり、また手軽にできそうなメニューもあるので、すぐに試してみたくなります。
酒とつまみに気を取られていると、ラストで思いっきり足元をすくわれますよ。そんな驚きも楽しいグルメミステリーです。
俺の飼い主は「ボウルいっぱいの牡蠣」でため息つきながら読んでいたぞ。
今度プレゼントしてやろうかな。
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『満月珈琲店の星詠み』 桜田千尋 (画)望月麻衣 (著) 文春文庫
満月の夜だけ現れる不思議なカフェ。
お客さんに合わせたメニューと、占星術で
癒してくれるのよ。
満月の夜にだけ現れるカフェ。マスターと従業員はなんと猫。そのカフェでは、お客さんに合ったメニューを出してくれる。今日も様々な問題を抱えたお客がこの店にやってきて…。
脚本家の芹川瑞希はスランプ気味。新しく書いた台本もボツ。落ち込んでいるところ、偶然「満月珈琲店」にたどり着きます。猫が働くこの店に驚きつつも、彼女は現在の悩みを漏らします。すると、マスターはホロスコープで瑞希の「星詠み」をしてくれたのでした。
人には決まった性質や特徴があります。ないものをねだるのではなく、あるものを上手に使って自分に合った生き方をすることが大切なのだということを教えてくれる物語です。感動のラストには思わず涙が溢れてしまいます。
星を散りばめたような美しい
スイーツのイラストがまた素晴らしいぞ!!
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『一膳めし屋丸久』 中島久枝(著) ハルキ文庫
小さな一膳めし屋を切り盛りする
二十九歳の女主人お高。
美味しい料理と、江戸の温かい人情を
描く物語よ。
父親の後を継ぎ、一膳めしやを営むお高。白い飯に汁物、メインのおかず、サブのおかず、一口サイズの甘いもので提供。旬のものをふんだんに使い、朝から一働きした男たちのお腹を満たす。そんなお高のもとに縁談の話が舞い込んで…。
気取ったものではないけれど、家庭では作れないような、毎日食べられる味を。そんな思いで料理をするお高は実直で真面目。
お嫁に行くのは諦めている様子ですが、舞い込んだ縁談話から店の存続について悩んだりも。
江戸の町の人々の人情を感じ、料理人としても、女性としても日々成長を続けているお高の姿にエールを送りたくなる物語です。
店主が真面目に作る季節の料理。
こういうおかずってご飯が進むんだよなあ。
リピーター多そう。
『ときどき旅に出るカフェ』 近藤史恵(著) 双葉文庫
三十七歳の独身OLが見つけた居心地のいいカフェ。
異国情緒あふれるメニューを楽しみながら、日常に
起こるちょっとした事件に出会うの。
OLの瑛子は三十七歳、独身。近くに良い雰囲気のカフェを見つけ、入ってみると、そこはかつての同僚が経営する店だった。
彼女が旅先で気に入った料理を、お客の口に合うように手を加えて提供される料理やスイーツ。食べてみれば、店にいながらまるで外国の地に来たような気持ちになれる、そんな場所。
店にやってくるお客の中にはは、何やら問題を抱えているかのような人も。そこには、女性という存在に対しての、世間からの目線が感じられます。
そんな女性を縛り付けられるような何かから、軽やかに旅立てるような異国情緒あふれる料理は、彼女たちがホッと一息つける場所でもあります。戦う女性たちの舌と心を癒す物語。
人生の苦味も知っているからこそ、
甘みが胸にしみてくるのかもしれないな。
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『ビール職人のレシピと推理』 エリー・アレグザンダー(著)創元推理文庫
ビールで有名な小さな町の中で起こる殺人事件。
ビール造りとおつまみアイデアの腕がピカイチの女性、
スローンが事件の謎に挑むの。
ビールで知られる小さな町、レブンワース。オクトーバーフェストの開催に向けて新作のビールを開発していたスローン。そこへ、ビールをテーマにしたドキュメンタリー映画が撮影されることに。だが、オクトーバーフェスト開催の前日、映画関係者が何者かに殺された。
ビールが作られる過程も詳しく解説されていて、ビール好きにはたまらない一冊です。オクトーバーフェストの盛り上がっていく町や人々の様子が描かれ、賑やかな様子が伝わります。夫とは別居中、しかし夫の親はとても大切で大好きなスローンは複雑な心境です。
しかし、ビールやおつまみのこととなると途端にイキイキとして、しかもいい仕事をするのが彼女の素晴らしいところ。そのガッツは殺人事件解決への力ともなっていきます。
できたてのビールを飲んでみたい!と思う物語。
これを読んで飼い主が「夜な夜なエール」と
「水曜日のネコ」と「インドの青鬼」を買いに
走っていったぞ。
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『ひかりの魔女』 山本甲士(著) 双葉文庫
同居することになった、美味しい料理を
作るおばあちゃん。
そのおばあちゃんが大人たちに尊敬されて
いる理由とは?
おばあちゃんはスーパーマンだった!?浪人生・真崎光一の家に、おばあちゃんが引っ越してきた。おばあちゃんは庭に七輪を出してきて、お釜で米を炊く。サンマの糠炊きがうまい。
そして、町内の大人たちに異様に尊敬されている…。そして平気で嘘をつく。そんなおばあちゃんの正体とは。
まとまりがなく、ギスギスしていた光一の家族ですが、おばあちゃんがやってきてから状況が変化していきます。
おばあちゃんがつく「嘘」と、手をかけて作った料理はみんなを幸せな気持ちにさせるのです。飾らない、でも手をかけられた料理はおばあちゃんそのもの。ゆっくりと噛み締めて読みたい物語。
料理だけじゃない!人間としての魅力もたっぷり詰まった
素敵なばあちゃんのファンになっちゃうぞ。
イラストレビューはこちらから。
まとめ
いかがでしたでしょうか。美味しい料理は、人のお腹を満たし、そして幸せな気持ちで心を満たしてくれます。そんな料理が描かれた小説をぜひご堪能ください。
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