『象は忘れない』 柳 広司 (著) 文春文庫
あらすじ
2011年3月11日。あの日、あの場所でいったい何が起きたのか。原発事故に巻き込まれたスタッフ、福島から避難した母娘が受けた差別、避難指示を解除され家に帰るように言われた人々。ニュースでは流れなかった「福島」を描き出す5つの短編集。
避難先での戸惑いと苦悩を感じる、幼い娘を連れた母親
漁師だった夫が、仕事ができなくなったストレスから酒を飲み、暴力を振るうようになったため、東京へと避難してきた靖子。幼い娘とやってきた東京は光にあふれ「まるで何事もなかったかのよう」に靖子には感じられました。最初は親切に接してくれた周囲の人々も、靖子自身の放射能や原発に対する知識、認識の低さに呆れ、次第に靖子母娘を遠まきにするようになっていきます。精神的に疲弊しきった靖子に声をかけてくれたのは上品な中年女性。誘われて参観したのはあるデモだったのです。
まとめ
原発事故で喪ったものは、家族や仕事、安心して帰れる場所。そして国や企業への信頼と大きなうねりに流されてしまっている人の「正義」への冷静な視点、なのかもしれません。
<こんな人におすすめ>
震災当時、その後など表に出なかった福島の状況を描いた話を読みたい
現地の人々が様々な角度から受ける苦痛はどんなものか知りたい
柳 広司のファン
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