清々しいまでの達観ぶりが光る「切ない」エッセイ

『実家が全焼したらインフルエンサーになりました』

実家が全焼したサノ (著)  KADOKAWA

あらすじ

実家が全焼し、母は蒸発、父は自殺。そんな切ない人生を送ってきた著者が、ホストのナンバー2となり、京大の大学院に進学し、インフルエンサーとなるまでの軌跡を描いたエッセイ。

著者の「切ない」エピソードを描くエッセイ

『切ない』ことが続く著者の人生を、「父との切ない話」「子どもの頃の切ない話」「大人になってからの切ない話」「インフルエンサーになった話」と四つの章に分け、それぞれの時代のエピソードを綴ります。

深刻なテーマにクスリとさせる一文を紛れこませたり、いろんな無茶をやっておきながらもどこか憎めない、奥深い人物であることが窺い知れます。

父親との切ない話

著者の父親は、ギャンブル、借金、アルコール中毒となかなかのダメ男っぷり。ついには母親が愛想を尽かして家を出て行ってしまいます。

自身の生活を立て直そうとリサイクルショップを開くも、何故かアダルトビデオも一緒に売り出すようになり、それまで少しあった売り上げも激減。ある日食材が何もないことに気づいた父は、「ドッグフード、一回食べてみよか」と言い出す。息子をナンパに使う。息子に喧嘩をさせて鍛える。


ムチャクチャやがな。そんな父親が嫌いではなく、今の自分立場から当時の父親の状況や心境を冷静に分析して、自虐とユーモアを交えつつ淡々と語る姿が印象的です。グレてもおかしくない状況ですが、根の優しさとその冷静な分析力で、不良になるには割に合わないということをすでに感じていたのかもしれませんね。

子どもの頃の切ない話

子ども時代の話は純粋に楽しめる「切ない」話が多いです。なかでも、前世が見えるという友達に、自分の前世をみてもらったら「ウナギ」だったというエピソード秀逸。しかも二匹(笑)。しかもその事実を受け入れた(爆)!切ない…。


中学時代にはビジネスも手がけ、ゲーム販売の仲介業のようなことも。自分の足で、ゲームを売りたい人と買いたい人を繋げ、成立すれば手数料をもらえる、という人力マッチングアプリのような商売です。

こうした事を思いつくこともすごいですが、迷いなく実践に移り、成果を出しているところがすごい。只者ではないですね。それでも「すごい話」で終わらないのが本書ミソ。オチはやっぱりトホホな状況になり、やはり切ないのです。

大人になってからの切ない話

大人になってからは学費を稼ぐためにホストクラブへ。先輩からのアドバイスを聴き、実践し、失敗し。それでもトライアンドエラーを繰り返し、なんとナンバー2の座へと駆け上がります。素直に人の話を聴き、実践するところがこの成功につながっているのかもしれませんね。


大学卒業後にバーを開き、経営の悪化からV字回復、その後京大の大学院へと進学。現在はサラリーマンをしていて、そこでもやっぱり切ない事態に巡り合いながら、何度もバズる状況を引き出す「インフルエンサー」となります。

「切ない」ながらも素晴らしい行動力を発揮し続ける理由とは

ジェットコースターのような、というかレールがないところばかりを走り続けてきたような著者の人生。その波乱万丈な出来事とは裏腹に、文章は自制が効いていて、雲の上から自分を眺めているような客観性があります。そんな著者から染み出てくる人生観は「やってみる」そして「その結果を受け入れる」ということです。


思い立ったら行動する。あれこれ考えすぎずにアクションに移す。もちろん失敗することもあります。そこから目を背けることなく、やっちまったなぁと受け入れ、「切ない」とすることで自分の悲しいとかやるせない気持ちを認めてあげる。そうして、きちんと消化しているから、尻込みするこなく次の行動につなげていけるのかもしれません。

まとめ

僧侶のような、達観した視点を持ちながらも、素晴らしい行動力を持つ著者の魅力が詰まったこのエッセイ。人生には何が起こるかわからない。それでも淡々と何かを行動に起こし、やらかすおかしさと、そこへ向かう勇気をもらえます。規制や思い込みを取っ払って、もっと人生いろいろと楽しんでいい。そんな気持ちにさせてくれる1冊です。

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