こちらは社内報に毎月掲載される
ミステリ小説と、その作家にまつわる
謎を描いたミステリーよ。
ほうほう。投稿された小説の内容、
それから作品を描く著者と
入れ子方式で謎が発生するわけだな?
そうなの。広報誌担当となった
著者と同名の主人公、若竹七海が
十二ヶ月分の原稿が揃ったところで
ある結論に達するのよ。
担当者が探偵役になるのか。
いったい連載小説には
どんな真実が潜んでいたんだろう?
『ぼくのミステリな日常』若竹 七海 (著)創元推理文庫
あらすじ
仕事をそろそろ辞めようかと思っていた矢先、社内報の製作担当となり面食らう若竹七海。
企画会議で小説を載せる話が持ち上がり、先輩に執筆の相談をしたところ、先輩の知人である匿名作家を紹介される。
毎月届く、日常の謎を描く物語が広報誌に彩りを添える。
一年間の連載を終え、若竹はいよいよ匿名作家と対面する。
匿名作家によるミステリ小説の謎と
慣れないけれどもこれまでの仕事と違った楽しさとやり甲斐を社内報製作に感じている若竹。
企画も固まり、小説の連載も決まったのですが広報誌ゆえに予算面が厳しいこともあり、格安で引き受けてくれないかと先輩に相談します。
文章を描く知人がいる、と紹介された人物は匿名作家。
この作家から毎月、季節に沿ったミステリ短編が送られてきます。
桜の見えるアパートで起こった小火騒ぎの謎を描いた四月、姉妹が暮らす家の周囲をうろつく男の正体を探る五月、悪夢を見続けて亡くなった友人と朝顔の関連に迫る八月。
季節の要素を取り入れながら様々な謎が登場します。
十二ヶ月の連載を終え、若竹は原稿料を持って作家に会いにいきます。
そこで若竹は作家に向かってある推理を披露するのです。
まとめ
先輩との手紙のやりとり、各月の冒頭に記載された広報誌の目次。
各月のミステリはゆるやかにつながっており、匿名作家自身と思われる人物が登場します。
細かな部分から大きなまとまりまで、その構成と流れが見事で、結末で驚いた後に答え合わせをするためにもう一度本を開きたくなります。
著者と同名のキャラクター、若竹七海が物語に軽さと柔らかさを与え、謎の重さや緊張感と好対照に描かれています。
各月に仕組まれた謎、そしてモチーフが導き出す真実にカラフルないくつもの箱のふたを開けていくような楽しさがあります。
伝説のデビュー作と言われるのも納得の、企みに満ちたミステリーです。
<こんな人におすすめ>
会社の広報誌に載せる連載小説がミステリ短編集の形となっている話に興味がある
毎月の謎が驚きの真実へとつながっていくミステリを読んでみたい
若竹 七海のファン
うわあ 謎がいくつもの層に
なっていて、その展開と
見せ方がなんともうまい!
広報誌の誌面に見立てた
レイアウトなど細やかな
こだわりも楽しいミステリーね。
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