『横浜コインランドリー 今日も洗濯日和』
泉ゆたか (著) 祥伝社文庫
こちらはコインランドリーに
やってくるお客と従業員の
ふれあいと人間模様を描く
『横浜コインランドリー』の
第二弾よ。インフルエンサーが
お店を紹介したことで若者が
次々と店に訪れるの。
ええ??そのインフルエンサーってのは
どんな奴なんだ??
店長の真奈とも知り合いの
若くて綺麗な女性、琴美が
SNSで紹介したのよ。でも従業員の茜は
彼女がふと見せる寂しげな表情が
気になるの。
へえ。SNSの人気者って
華やかなイメージがあるけどな。
彼女はなんか問題でも
抱えているんだろうか。
あらすじ
赤いレンガ造りの古いマンションの1階にあるヨコハマコインランドリーで働く茜は仕事にもだいぶ慣れてきた。
ある日スマホを手に若者たちが次々と店にやってきた。
インフルエンサーの琴美がSNSで紹介したことがきっかけらしい。
琴美にはすぐに削除してもらったものの、茜は彼女がふと見せる寂しげな横顔が気になってしまう。
インフルエンサーが心の中に抱えるもの
ヨコハマコインランドリーで働きながら、洗濯についてもっと学ぼうと、国家資格であるクリーニング師の試験に向けて猛勉強中の茜。
しかし、この頃はできないことに目が向いて落ち込むことも。
常連の大塚や店長の真奈からアドバイスをもらったり励ましてもらいながら、何とか頑張っています。
そんなある日、可愛くてスタイルの良い女の子がお客としてやってきます。
似合ってはいるけれど露出の高いファッションに何だか危うさを感じ「コインランドリーの使い方、わかりましたか?」と茜は声をかけます。
サービスのコーヒーを飲み、帰っていった女の子は琴美という名のインフルエンサーでした。
彼女がヨコハマコインランドリーをSNSにあげたことで、スマホを手にした若者たちが続々と店にやってきます。
真奈が介護士時代に担当した人物の孫にあたるという琴美に、真奈から店内撮影禁止であること、動画を削除してほしいことを伝えるとすんなりと承諾。
トラックのドライバーをしているという彼女はお店にちょこちょこ顔を出すようになります。
常連の大塚を食事に誘ってみたりと、どうも行動や言動がちぐはぐで危なっかしい琴美ですが…。
まとめ
洗濯相談が人生の悩み解決のヒントへとつながっていく洗濯物語「ヨコハマコインランドリー」第二弾。
クリーニング師を目指し勉強中、ちょっぴり恋の予感もする茜。
お店には妻を亡くした夫や、同居する姑に悩む嫁、認知症の母と暮らす息子など、様々なお客がやってきます。
第一印象でお客を語ろうとする茜に対し、真奈はやんわりとたしなめ、お客に先入観を持ってはいけない、と話します。
そうした真奈のきっぱりとしたたたずまいとフラットな態度は洗い立ての真っ白なシャツを思わせます。
表面に出ているものは、その人のほんの一部の情報でしかない。
そうしたことを改めて感じさせてくれます。
洋服は自分を守ってくれるもの。
だから綺麗に洗って大切にしたい。
そんな、大事なことをそっと教えてくれる、胸があたたかくなる物語です。
<こんな人におすすめ>
洗濯することで自分の問題と向き合っていくお客たちを描いた物語を読んでみたい
前作『横浜コインランドリー』を読んだ
泉ゆたかのファン
自分でも違う方向に進んでいる
っていう違和感を覚えることって
あるよなあ。この店はそんな自分を
立ち止まって振り返るような
そんな気づきをくれる場所なのかも。
洗濯をするという行為は
汚れをリセットすること。
汚れも自分もまっさらになれば
新しい一歩を踏み出す力を
得られるのかもしれないわね。
前作『横浜コインランドリー』のイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます。
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