こちらは探偵作家のハリエットが
海岸で男性の死体を発見するの。
貴族探偵のピーター卿とともに
事件の真相に迫るのよ。
海岸かあ。証拠が海に
流されたりしそうだな。
岩の上に死体はあったのだけれど
潮が満ちて流され行方不明に。
周囲に人気がほとんどなくて
目撃者証言もあまり取れないの。
なかなか条件が厳しいなあ。
そんな中で犯人にたどりつく
ことができるのだろうか?
『死体をどうぞ』ドロシー ・L・セイヤーズ(著)
ドロシー ・L・セイヤーズ(著),浅羽莢子(翻訳)創元推理文庫
あらすじ
探偵作家ハリエット・ヴェインはウィルヴァークムを目指す道のりの途中、海岸で昼食を取ることに。
うたた寝の後に浜辺を歩いていると岩の上で男性が寝ているのを発見。
近づき声をかけてみると喉を切られ血を流している死体だった。
死体は満潮で流されて行方不明に。
貴族探偵ピーター・ウィムジイ卿が事件解明のために乗り出すが、出てきた事実はさらに真相を複雑にさせる。
首を切られた死体は自殺か他殺か
作家のハリエットは岩の上で血を流して死んでいる男性を発見。
職業柄現場を可能な限り確認してみるとヒゲを生やした色白の外国人らしき若者で、はめていた手袋は血に染まっていました。
周囲の砂浜についた足跡はハリエットのものだけ。
首を切った凶器と思われる折りたたみ式の剃刀も発見。
持参していた写真機で現場と死体を撮影し、潮が満ち始めたため現場を後にします。
警察に連絡をしてもらおうと近辺を歩き回りますがなかなか人がおらず、出会っても話が通じない老人やこの辺りを知らない旅行者たち…。
ようやく連絡ができ事件を伝えたハリエットですが、何と潮が満ちたために、肝心の死体が流されてしまい行方不明に。
ハリエットが手に入れた凶器と証拠写真をもとに捜査する警察たちに、ハリエットに求婚し続けるピーター卿も参戦。
被害者はホテルでマダムたちのダンスの相手をしているロシア人のジゴロでした。
彼と結婚の約束をしていたという母親ほどに歳の離れた婦人、そして苦しい農場の経営をしている婦人の息子。
様々な人物の思惑が入り混じり、ハッキリとしきれないアリバイとともに事件は混迷を深めていきます。
まとめ
高い岩の上にあった、首を切られた死体は自殺か、それとも他殺なのか。
被害者の出自の謎、何かを隠す様子の漁師の老人、財産を欲する様子の農場経営者。
怪しいカードが何枚も登場するものの、そのどれもが決定打に欠け、さしものピーター卿も苦戦。
自我をしっかりと持つハリエットと良いコンビで終盤に一気に解決に向かっていく、動機とトリック、そして見事な構成と読み応え抜群のミステリーです。
<こんな人におすすめ>
女性探偵作家と貴族探偵のコンビが謎を解くミステリーを読んでみたい
ピーター卿シリーズのファン
ドロシー ・L・セイヤーズのファン
いやあ こんなに怪しいヤツらが
出てくるとは!被害者自体も
事情が特殊だよな。設定が
込み入っていて作者の気合を
感じるぞ。読み応えあるな。
自立したハリエット、高等遊民で
頭脳明晰なピーター卿コンビの
やりとりもテンポ良く、そして
時代が変わっても色あせないトリックや
動機に思わず唸るミステリーね。
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