
こちらは引ったくり犯を
探そうとした大学生の春風と
高校生の錬が別の犯罪との
つながりを見つけ出すお話よ。

引ったくり犯が?
どんな犯罪とつながって
いるんだ?

特殊詐欺への関わりや
過去に起こった事件などの関連が
次第に明らかになっていくの。

ええ!?そんなヤバそうな
事件が関係しているのに
女子大生と男子高校生が
関わって大丈夫か?心配だな…。
『金環日蝕』阿部 暁子 (著)創元推理文庫
あらすじ
大学で心理学を専攻している春風は、目の前で知り合いの老女が引ったくりに襲われる場面に遭遇。
その場に居合わせた高校生の錬とともに犯人を追うが取り逃がしてしまう。
犯人が現場に落としたキーホルダーをもとに、錬とともに犯人を捜そうとした春風だが…。
引ったくり犯を捜すことで別の犯罪とのつながりが見えてくる
走り込みをして鍛えている春風は、近所の老女・サヨ子の荷物を奪い取った男の後を追いかけます。
途中、真っ黒な詰襟の学生服を着た男子学生が横をすり抜け、彼と犯人を挟みうちしようと速度を上げますが、車と衝突したため犯人を取り逃してしまいます。
後日、サヨ子からお礼をもらった春風は、錬を呼び一緒に食事をすることに。
サヨ子は犯人に顔や家を知られていることが怖ろしく、警察に届けるつもりがないと言っていることを錬に伝える春風。
犯人が落としていったストラップの話題になり、それは春風の通う大学で行われた写真展で販売されたものだったことがわかりました。
互いに危険だからこれ以上首を突っ込まないようにと言いながらも、結局日数限定という条件付きで一緒に犯人を捜すことに。
コミュ力が高く、年齢以上に落ち着きがある錬ですが、男女双子の兄であり、高校生らしい一面を見せることも。
そして引ったくり犯の正体が明らかになり、そこでこの件は終わるはずだったのですが事態は二人を巻き込み、思わぬ方向へと転がっていくのです。
まとめ
前髪を気にしていて、筋トレが趣味な春風はこうと思うと突っ走る危なっかしい部分を持っています。
一方、高校生とは思えない落ち着きと臨機応変な対応力を持つ錬は兄ちゃん大好き!な弟とクールな美人の妹の双子のために食事を作ったりもしています。
引ったくり犯の正体をとりあえず見つけ出す。
危険だと感じたら捜査をやめる。
そう約束した二人ですが。
大学生が特殊詐欺へ参加するささいなきっかけから、やがてさらなる犯罪に手を染めようとしていく経緯やその背後にある様々な事情に、胸が苦しくなります。
さらに錬や春風が抱えているものが明らかになった時、思わず息を呑み、なんとも言えない気持ちになるのです。
犯罪への入り口はすぐそばに、誰の横にも開いているものなのかもしれません。
彼らの闇をさらに濃くする光の存在に思いを馳せ、その余韻が長く残る物語です。
<こんな人におすすめ>
ひったくり犯を探すことをきっかけに詐欺事件の関わりにつながっていく物語に興味がある
犯罪に関わる若者たちのそのきっかけや苦しみなどを描いた話を読んでみたい
阿部 暁子のファン


強すぎる光のそばにできるのは
より濃い闇ってわけだな。
犯罪に手を出す学生の理由にも
切ないものがあるな…。

犯罪に手を染めていく若者たちや
関わる人々の苦しみや葛藤が
細やかに描かれ読む者の心を
強く揺さぶる物語ね。
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