
こちらは終電に絡んで起こる
人間ドラマを描く『終電の神様』
シリーズ第五弾よ。

電車がなくなった時間帯ね。
今回はどんなことが起こるんだ?

商店街の広報誌を作っている
女性が締め切り間際に入った仕事に
やる気をそがれて夜中の商店街へと
繰り出すの。

ほう。取材対象として昼間には
顔を合わせているであろう商店街で
夜はどんな顔を見せてくれるのかな。
『終電の神様 夜明けの行進』阿川 大樹 (著)実業之日本社文庫
あらすじ
商店街の中にある小さな書店、「佐久間書房」に勤め、広報誌「うきうきタウンズ」を一人で制作している阪口朋香。
終電間近に入ってきた仕事にやる気をなくし商店街へと繰り出す。
ミュージシャンを目指していた日々、旅先での気づき、大切な人との別れ。
終電後の思わぬ出会いと交流に背中を押され前へと進んでいく女性の姿を描く、シリーズ第五弾。
終電間際に飛び込んできた仕事
本好きの会社員・東地太郎さんが、たたもうとしていた佐久間書房を引き継ぎ経営しています。
本屋の経営も決して順風満帆ではなく、店を続けるためには何か別のことをしなくてはと考えた店主は、タウン誌の発行を思いつきます。
ミュージシャンへの夢をあきらめ、仕事を探していた朋香はこうした経験はなかったものの、応募し採用されます。
教えてくれる人もなく調べながら自力で取材し、原稿を作成し一冊の本にすることに慣れてはきたものの、終電も近くなった頃に原稿に大幅な手直しが入ることに、無理ではないか、原稿を入れられなかったら発行が遅れてしまうのか…とあれこれ考えどうにもやる気が出ない朋香は書店のシャッターを閉めて夜の商店街へ。
中華料理店で腹ごしらえをして店の様子を聞きつつ、その後中華料理店の店主と連れ立ってこれまた近所のスナックへ。
見慣れた面々が思い思いに過ごす中、朋香はミュージシャンを目指していた歌声を披露。
会場が盛り上がる中、広報誌の印刷をお願いしている印刷所の社長、佐渡山さんの姿もあり、朋香にある言葉をかけてくれたのです。
まとめ
タウン誌づくりに奮闘する朋香が、その仕事や休暇の旅先で出会った出来事、かつてミュージシャンを目指していた過去やその頃経験した短い恋、そして大切な人との別れを連作短編集の形で描いていきます。
日常の仕事は頑張っているけれど、誰かに認めてもらえるとやっていて良かったと思えるし、一層頑張ろうと思えるもの。
商店街の人々や書店の店主に支えられ、一歩ずつ進んでいる朋香ですが、一人で暮らしている母の様子が最近気になって…。
毎日変わらないように見えることでも、少しずつ変化しているものです。
その変化があまりに小さいものであるほどに気づくことが難しいのかもしれません。
挫折や別れがあっても、立ち止まるのではなくただ前を向かって歩いていく。
そうすることで新しい何かが見えてくる。そんな風に感じられる物語です。
<こんな人におすすめ>
終電後の思いがけない出会いや人生の挫折と希望を描くあたたかな物語を読んでみたい
『終電の神様』シリーズのファン
阿川 大樹のファン


朋香… いろいろあったなあ。
そして変わらないものなんて
実は何一つないものなのかも
しれないな。

そうね。生きていく上で
訪れる変化をひとつずつ
受け入れていくこと。その上で
進んでいくことができるならば
きっと彼女の進む道は拓けて
いるのではないかしら。
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