こちらは老朽化した
デザイナーズマンションをめぐる
住民と建築関係者の悲喜こもごもを
描く物語よ。
老朽化?修理したらいいんじゃないの?
または建て直しちゃうとか。
ところがそう簡単にもいかないの。
文化的価値や思い出、
そして現実問題としての不具合など
当事者たちの思いが複雑に絡み合うのよ。
なるほどねえ。それだけ
思い入れのある住まいってことか。
どうやって決着をつけるんだろうな。
『そのマンション、終の住処でいいですか?』
原田ひ香 (著)新潮文庫
あらすじ
赤坂に立つ、築四十五年のデザイナーズマンション。
有名建築家によって設計されたマンションは、その外観から「おっぱいマンション」と呼ばれている。
かつては華々しく話題にのぼっていたが老朽化にともない、あちこちで不具合が発生。
改修工事をめぐり、新旧住民や建築事務所関係者など、様々な思惑が絡み合い、事態は混乱を極めていき…。
マンション老朽化問題に振り回される住民たち
1960〜1970年代に流行し、代謝を繰り返して成長する「細胞」をイメージして立てられた赤坂ニューテラスマンション。
かつては時代の最先端の建築物としてなんどもメディアに取り上げられましたが、築四十五年となり老朽化が進み、さらに欠陥部分も出てきました。
教職を定年退職し、妻と二人でこのマンションに移り住んだ市瀬清は、住んでから水漏れや湿気に悩まされます。
そして管理会社を通して建て替えを要請したところ、このマンションを建てた建築家の娘、小宮山みどりから承諾の回答を得ます。
すんなりと出たOKに、どこか納得のいかない小宮山ですが…。
他にも元女優の老女や婚約者の浮気に悩む娘の母、そして今は亡き建築家とその娘を支えてきた男など、各自が建物と自分の人生を重ね合わせ、迷い、心を揺らします。
まとめ
愛着はあるけれど欠陥のある住宅。
不具合に目をつぶるか、根本から作りなおしてしまうのか。
そこに見栄や意地、そして固執が住む人の数だけ絡まり合うとしたら…。
新陳代謝が滞ると様々なトラブルが発生する。
そんな風に感じる物語です。
<こんな人におすすめ>
老朽化したデザイナーズマンションで勃発する問題に興味がある
住まいへの思い入れや悲喜こもごもを描いた物語を読んでみたい
原田ひ香のファン
人にも建物にも歴史あり、だな。
思い出にしがみついていると
それがいつしか脂肪みたいに
体についてしまうものなのかも。
人も建物も代謝を繰り返して
いくことが必要なのかも
しれないわね。
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