こちらは江戸の人々の
『眠り』を専門に診てくれる
養生所・ぐっすり庵に関わる
人々を描いた物語の第二弾よ。
やる気のない医者と良い働きをする猫、
そして気持ちが空回りする若い娘が
出てくる物語だよな。
そうなの。口コミで
評判になってきたこのぐっすり庵に
今回はちょっとクセのある人物たちが
登場するのよ。
ほほう。ひっそりと営んでいる
ぐっすり庵に、どんなことが
起きるんだろうな?楽しみだぜ!
『朝の茶柱 眠り医者ぐっすり庵』
泉 ゆたか (著)実業之日本社文庫
あらすじ
蘭学を学び、長崎から帰ってきた兄の松次郎と、眠り専門の養生所を開いた、茶問屋の娘・藍。
ひっそりと営むこの庵には、その評判を聞きつけた、眠れぬ人々がやってくる。
そんな中、両親亡き後茶問屋を営んでいた伯父が、傾いた経営を立て直すために呼んだのが、万屋の一心という男。
耳障りの良い言葉を並べ立てる一心に、どこかあやしげなものを感じながらもつい聞き入ってしまう藍だが…。
一見恵まれているように見える 眠れぬ人々の悩みとは
ひょんなことから大金持ちになってしまった、元棒手振りの老人。
御家人株を買ったことで、息子を立派な武士に育てようとするが、全くうまくいかない、もと庄屋の男。
一見恵まれた環境にありながら、目に見えぬ不安にさいなまれ、眠れなくなっている彼らに、松次郎は藍や猫のねう、そして自称弟子の少年・福郎の力を借りながら、患者たちに本当に大切なものを見出すように導きます。
そんな中、経営が思わしくない茶問屋の商売を立て直すためにやってきた一心は、己の著作を藍に読むように、と手渡します。
どこかで聞いたことがあるような、それでいて安心したり元気が出るような言葉たち。
しかし最後は必ず「金を稼いで良い暮らしをしよう」に行きつくこの書は人気となり、商売の話も舞い込むようになったということのようですが…。
一心の正体とは。
まとめ
あやしげな金もうけセミナーの主催者をほうふつとさせる一心。
真っ向から問いただすだけの学問も経験も持ち合わせていない藍。
そこに眠気を呼ぶ噺家も加わり、事態は大きく動きます。
「眠り」がテーマでありながら、猫を含む登場人物たちが生き生きと動き回り、笑いと感動を与えてくれる、シリーズ第二弾です。
<こんな人におすすめ>
江戸時代の眠り専門の医者を描いた物語に興味がある
眠りと人間の生き方について人情たっぷりに描かれた話を読んでみたい
泉 ゆたかのファン
うわあ〜 一心みたいなやついるよな!
他にも眠りを誘う噺家とか、面白キャラが
たくさん出てきて、動きのある展開が
おもしろい!最後まで目が離せないな。
『眠り』をベースに、人間の弱い部分や
ダメな部分を時にコミカルに、そして
まっすぐな目線で描いている物語よね。
前作『猫まくら 眠り医者ぐっすり庵 』のイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます。
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