『#真相をお話しします』結城真一郎 (著) 新潮文庫
こちらは現代社会をテーマに
日常に起こる様々な「違和感」を
捉えた五編のミステリーよ。
現代社会かあ。Youtubetとか
出てきたりするわけ?
親にスマホやゲームを禁止されたり
制限されている小学生が
Youtubereに憧れる話も登場するわ。
それだけ聞けば微笑ましい
話でもあるんだけどな。
小学生たちにいったい何が
起こるというんだろう?
あらすじ
島育ちの仲良し小学生、チョモランマ、凛子、砂鉄、口紅。
テレビ、ゲーム禁止、スマホも持たないチョモは「一緒にYoutuberにならない?」と凛子に誘われる。
彼女の持つiphoneはまさに「未来」の機械。
ここから発信する姿を夢見るチョモたちだったが…(「#拡散希望」)。
マッチングアプリで知り合った女性と飲みに行き、ささやかな駆け引きを楽しんだ後、順調に彼女の部屋へと招き入れられた。
ここまでくれば目的位はひとつ…(「#ヤリモク」)ほか現代社会をテーマに起こる『違和感』を捉えた五編のミステリー。
Youtuberを夢見る小学生たちの前に現れたのは
テレビは一日三十分まで。
ゲームは禁止、スマホや携帯も所持禁止。
そんな両親は「子育ては絶対に田舎で」と決めていたようで、チョモランマが生まれるとすぐに島へと移住しました。
子供へのルールはあるもののチョモランマは特に不便を感じることもなくのびのびと暮らしていました。
ある日、仲良しグループの一人、凛子が親に買ってもらったというiphoneを見せてくれます。
いろんな画像や動画が出る、まさに「未来の機械だ」とチョモランマが感動していると、凛子から一緒にYoutuberにならない?と言われます。
何だか楽しそう、と話していた彼らの前に、明らかに島外から来たとわかる人物が「ねえ、よかったら一緒に映らない?」とスマホを取り出します。
その男は後日、腹部をナイフで刺されて死亡したとニュースで流れ…(「#拡散希望」)。
マッチングアプリで意気投合した女性を、評判の良い店に連れて行き、食事と酒を楽しむ男性。
無防備とも積極的とも見える女性・マナは彼を自宅へと「お持ち帰り」します。
このスムーズな流れに違和感を覚えた男性がシャワーの途中で浴室から出ると、そこにはマナともう一人の男性の姿が…(「#ヤリモク」)。
まとめ
中学受験、マッチングアプリ、精子提供、リモート飲み会、Youtuber。
現代社会をテーマにした五編のミステリーです。
カードを一枚一枚めくっていくように、少しずつ多方向から提示される情報は読者の心をざわつかせます。
もしかして?という部分に誘導しつつ、思いがけないところへの着地。
また、終わったと思うところからのさらに落とされる結末はインパクトがあり、見事です。
冷静で落ち着いた文体が、彼らの「異常さ」とよりいっそう引き立たせます。
何より怖ろしいのはどの話も実際にどこかで起こっていそうだ、ということ。
今はたまたま表に出ていないだけなのでは?とすら思えてくる、現実世界との境が非常に薄く感じられる衝撃のミステリーです。
<こんな人におすすめ>
マッチングアプリ、リモート飲み会、中学受験、精子提供など現代社会をテーマにしたミステリに興味がある
日常に潜む違和感を描いたミステリを読んでみたい
結城真一郎のファン
ちょっとした違和感が
積み重なっていくところが
緊迫感に満ちていてすごい。
結末の落とされる感もまた見事だな。
自分で結末を推理する
楽しさも味わえる
「どんでん返しのどんでん返し」
が冴えるミステリー短編集ね。
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