こちらは思いがけない
方向から感じる恐怖を
描いた短編集よ。
恐怖?幽霊とか?
それともリアルな人間が起こす
犯罪とかそういうのか?
怪談を集めている後輩が
彼女を連れて先輩夫婦の
家へとやってくるわ。
そこで怪談を披露するのだけど
先輩の妻は人間が一番怖い、と
怪談を否定するような発言をするのよ。
その意見も一理あるよな。
でもそれがどんな方向の
恐怖とつながっていくんだろう?
気になるぜ。
『怖ガラセ屋サン』澤村伊智 (著)幻冬舎文庫
あらすじ
怪談を集めている会社の後輩、シングルマザーから金を吸い取るスピリチュアル詐欺、同級生を自殺へと追い込んだいじめの事実をひた隠しにする小学生…。
都市伝説や幽霊より、一番怖いのは人間だ。
そう考える登場人物たちが予期せぬ方向からやってくる未知の恐怖に身を震わせる、連作短編集。
本当に怖いのは人間…?
小学六年生の息子が塾の冬季合宿へ行っている間、会社の後輩・司馬戸が婚約者の安藤郁を連れてやってきました。
妻のみさとが食事を用意し、ワインのボトルを開けます。
怪談を集めているという司馬戸に、息子から聞いた塾のストーカーの話を披露すると「現代的ですね」と今ひとつの反応です。
郁からも「ダイレクトな怖さはニュースで充分」と言われます。
するとみさとは、幽霊やお化けは怖くない、人間が一番怖いと思う、と酒が入っているせいか、いつもと違う様子で話し続けます。
郁からもいくつかの「怪談」を語るのですが、その話はある塾講師が過去に起こした犯罪で…(「人間が一番怖い人も」)。
小学五年生の三月、光太郎の同級生、矗が事故で亡くなりました。
あるきっかけで矗をいじめていた光太郎は、ひょっとして自殺なのでは、遺書があるのではと不安になります。
親に聞いたところ、そのようなものはなかったということで安心したのもつかの間、焼香に出向いた矗の家に知らない女性が箱を届けます。
開けてみると、かつて光太郎もいっしょに遊んだ、メンコとして使うための50枚ほどの牛乳キャップと一枚の便箋。
そこに書かれていたのは、ご子息の矗さんが何度も夢に現れ弔ってほしいと訴えること、牛乳キャップは何に使うかよくわからないが、「集めれば集めるほど、恨みを晴らしやすくなるから」という内容でした。
いじめが始まったきっかけは牛乳キャップで作ったメンコであることに気づいた光太郎は体中の血が引いていくように感じて…(「子供の世界で」)。
まとめ
怪談や都市伝説の怖いポイントや語り方など、客観的な楽しみ方を示唆したりしつつ、思わぬところで梯子を外された後に、遅れて恐怖がやってくる。
そんな想定外のミステリーのような感覚もするホラー短編集です。
想像がつかない、不気味な怖さだけではなく、事実であったとしても、見る角度やとらえ方によっては別の恐怖を生み出すもの。
そんな風に感じる、背筋が凍りつく七篇を収めたホラー短編集です。
<こんな人におすすめ>
都市伝説と現実の世界の恐怖が交わっていくような物語に興味がある
これまでにない恐怖を味わえる話を読んでみたい
澤村伊智のファン
ええええええヽ(; ゚д゚)ノ
じゃああの時のあれって…
という後から振り返って
二度恐ろしい!!
視点が変わるだけで
物事の意味がガラリと
違ってくる、これまでにない
恐怖を味わえる物語ね。
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