
こちらは『ちびねこ亭の思い出ごはん』
シリーズ第10弾よ。大切な人への
思いを告げられないまま別れとなって
しまった介護施設で働く晄はちびねこ亭へ
向かうのよ。

思いを告げられなかったのには
なにか理由があるのか?

思いを寄せた相手は施設の入居者なの。
年齢差も気にしていたし、彼は過去にも
同級生の男子生徒に惹かれその思いを
伝えられなかった経験を持っているわ。

なるほどね。それはかなりの
勇気が必要だよな。でも
伝えられるのも相手あっての
ことでもある。ちびねこ亭で
誰に何を伝えるのかな。
『ちびねこ亭の思い出ごはん 麦わら猫とそら豆のパスタ』
高橋由太 (著)光文社文庫
あらすじ
高校を卒業した後、実家を離れて千葉県の介護施設で働く瀬楽晄は、入居者の鈴森海子と仲良くなる。
しかし、彼女は年を経るとともに身体の不調を訴え始め、病が見つかり亡くなってしまう。
哀しみにくれる晄は海子の部屋に残されていた一通の手紙を発見。
そこにはちびねこ亭に行くようにと書かれていた。
口に出せなかったいくつもの思いを胸に
どう頑張っても輝いた音を出せない。
そう気づいた晄は夢だったピアニストへの道をあきらめ、他に打ち込むことも見つけられず勉強も運動も苦手。
「何もできない人じゃん」と自分で自分を笑ってしまう高校生になった晄はある日、音楽室から誰かがギターを弾き歌う声が流れてくるのを耳にします。
弾いていたのはクラスの人気者、御子柴奏。
「ピアノを弾いてくれない?一緒に歌おうよ」と声をかけられたことがきっかけで仲良くなり、彼のバンドの一員になります。
本格デビューを目指し東京へ向かう湊に一緒に行こうと誘われた晄は断ります。
そして湊に自分の本当の気持ちを伝えないまま離れることに。
高校卒業後、介護施設で働きはじめた晄は、もとは舞台女優だったという施設利用者・海子とピアノを介して仲良くなります。
いつしか彼女に思いを寄せるようになった晄ですが、やはりその思いは伝えることのないまま、やがて彼女は天国へと旅立ってしまったのです。
彼女の部屋には晄に宛てた一通の手紙が遺されていました。
そこには「泣けないくらいに悲しいことがあったら、ちびねこ亭に行くといい」と、ただそれだけが記されていました。
過去に誰かから聞いたその「ちびねこ亭」は、この世にいない大切な人と会うことができる店。
晄はここに行かなければならない、と感じます。
まとめ
好きだという思いを伝えることができないまま、会うことのなくなった友人や亡くなってしまった相手。
提供された「思い出ごはん」のプリンとホットミルクを口にする晄は、会えるはずのない海子が目の前に現れても黙りこんでしまい…。
二人と晄を繋ぐのは、一曲の歌。
それはエルトン・ジョンの『僕の歌は君の歌』で、そのメロディと歌詞はやさしく晄の背中を押してくれるのです。
伝えても、伝えてなくても時は流れ人生は続いていく。
どう生きるかを決めるのかを自分。
ちびねこ亭はこの世にいない大切な人と会うことで、残された今この時をどう生きるかということに気づかせてくれる、そんな場所なのかもしれません。
あたたかなものに包まれているような気持ちになる物語です。
<こんな人におすすめ>
思いを伝えることのできないまま亡くなってしまった人へ再び会えるお店の話に興味がある
『ちびねこ亭の思い出ごはん』シリーズのファン
高橋由太のファン


いまあるこの時が大切な
ひとときなんだって
改めて気付かせてくれる物語だな。

亡くなった人と話すことで
これからの時をどう生きるかを
改めて考えることができるのかも
しれないわね。
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