古い洋館を手に入れたらどうする?
まずは査定だな。土地と建物の価格、
それから建物を修繕して売却or賃貸経営した
場合の試算をして利益が高く出たものを選ぶ。
遺産なら相続税もあるしな。
(…ずいぶんと詳しいわね)
こちらは亡くなった大伯母から洋館を
遺された男性のお話よ。
戦前から戦後の、当時の洋館での様子と
現代の様子を交互に描いているの。
いやあ 不動産はね〜
持つにしろ手放すにしろ
慎重にしたほうがいいよ。
あとあと面倒だからな。
(…何かあったのかしら?)
『十六夜荘ノート』 古内 一絵 (著) 中公文庫
あらすじ
大伯母から目黒区の洋館を遺された雄哉。造りは立派だが、修繕の手は届いていないのか、あちこちに不具合が目立つ。
維持の目途も立たないことから、現在の住民に立ち退いてもらい、更地にして土地転用を検討。住民とのやりとりをするうちに、何故大伯母がこの邸を遺したのか、思いをめぐらせていく。
大伯母が遺した洋館にまつわる出来事とは
雄哉は頭が良く、仕事ができる有能な人間ですが、周囲の人間への気持ちの配慮に欠ける部分があります。そこへ持ち込まれた大伯母、玉青からの遺産相続の件についても、いつものように利益優先で処理しようとします。
この雄哉とシェアハウスとして使用している住民たちとのやりとりと、この邸で暮らしていた玉青の戦前・戦後の様子が交互に描かれます。
戦前からこの邸は芸術家が集まるサロンのような場所で、様々な人たちが集まっていました。戦争によってみな散りぢりになり、迎えた戦後には玉青は邸を手放すことになり…。
まとめ
自分の思うことを口に出し、行動して生きていけるか。命をかけて自分を貫く玉青の姿に胸を打たれ、雄哉も少しずつ変わっていきます。ゆずれない何かを心の中心に持つこと。その大切さを教えてくれる物語です。
<こんな人におすすめ>
仕事や人間関係の苦悩と戦時中の話がリンクするような話を読んでみたい
戦時中の社会の空気や、当時の芸術家たちの生き方に興味がある
古内 一絵 のファン
建物にもドラマがあるなあ。
「どう生きるか」「自分が何を大事にするのか」が
きちんとわかっている人間は悔いのない人生を
送ることができるのかもしれないわね。
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